DEEP FOREST/幻影の構成

読書記録。週2冊更新。A:とても面白い B:面白い or ふつう C:つまらない D:読むのが有害

町田康『ギケイキ 1・2』B+、ロバート・J・ソウヤー『ゴールデン・フリース』B+

【最近読んだ本】 町田康『ギケイキ 1・2』(河出書房新社、2016年~ )B+ 1巻の帯に「平家、マジでいってこます」などと書いてあるので、『義経記』にタイトルを借りた義経伝に過ぎないのではないかと思いつつ読んだら、ちゃんと『義経記』であった。河出文…

高橋克彦『時宗 全4巻』B、マイク・レズニック『第二の接触』A

【最近読んだ本】高橋克彦『時宗 全4巻』(講談社文庫、2003年、単行本2000年~2001年)B 『時宗』とはいいながら、北条時宗はなかなか生まれない。話は1246年、時宗の父・時頼が、病床の兄・経時から19歳で執権職を譲られるところから始まる。北条政子の死…

購書記録221015

【最近買った本】 2022/10/15 千葉の某ブックオフにて。 金子邦彦『カオスの紡ぐ夢の中で』小学館文庫 円城塔の師匠として一時期話題になった本。最初みたとき金子郁容かと思って『空飛ぶフランスパン』とか読んだなあ、などと思ったが違う人だった。 西村京…

小野不由美『残穢』B+、マイク・レズニック『キリンヤガ』D

【最近読んだ本】 小野不由美『残穢』(新潮文庫、2015年、単行本2012年)B+ 最近の作品のような気がしていたが、もう10年も前の作品なのだった。 歴史学的なロマンを持たぬでもないルポルタージュ風の作品で、小野不由美自身と思しき「私」とファンである久…

購書記録2022/10/8

【最近買った本】2022/10/8 東京の某ブックオフにて。 陳舜臣『小説十八史略 2~6』講談社文庫 昔はブックオフでよく見かけたので油断していたらすっかり見なくなってしまった。そろっていたのであわてて確保。1巻は汚いけどあるので買わず。 山本七平『常識…

真保裕一『ホワイトアウト』B、陳舜臣『琉球の風 全3巻』B

【最近読んだ本】 真保裕一『ホワイトアウト』(新潮文庫、1998年、単行本1995年)B 山奥で雪に閉ざされたダムの発電所をテロリストが占拠し、電力と圧倒的な水量により麓の町を人質にとって政府に要求をつきつける。絶体絶命のその状況に、ただ一人彼らの目…

購書記録2022/10/1

【最近買った本】 2022/10/1 千葉の某ブックオフにて。 奈良本辰也『風土の中の史実』(旺文社文庫) 奈良本辰也は読むと意外に面白いが、歴史読み物の量産作家というイメージで、死ぬ前にほとんど忘れ去られてしまった感じである。立命館大学で文学部長まで…

今邑彩『鋏の記憶』B、牧野修『ネクロダイバー 潜死能力者』B

【最近読んだ本】 今邑彩『鋏の記憶』(中公文庫、2012年、単行本1996年)B 物に触れるだけで持ち主の情報を読み取ることができるという、サイコメトリー能力を持つ女子高校生が主人公の、ホラー風ミステリである。連作短編で4話収録である。 最近の、ルール…

平山瑞穂『出ヤマト記』B、京極夏彦『ヒトごろし』B

【最近読んだ本】 平山瑞穂『出ヤマト記』(朝日新聞出版、2012年)B どう読めば良いのか、困る小説である。 窮屈な日常に不満をもつ少女が、実の祖父がいるという北の楽園「ヘブン」を求めて旅をする、ディストピア小説といえなくもない。 だがそう読むには…

購書記録2022/9/18

【最近買った本】 2022/9/17 神奈川の某ブックオフにて。 サラ・パレツキー『センチメンタル・シカゴ』(ハヤカワ文庫) 同『レディ・ハートブレイク』(同) 同『ダウンタウン・シスター』(同) 同『バーニング・シーズン』(同) 同『ヴィク・ストーリー…

伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』B、澤村伊智『ずうのめ人形』 B+

【最近読んだ本】 伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』(祥伝社文庫、2006年、単行本2003年)B 4人組の銀行強盗がいる。ひとりは他人の嘘を見抜く能力者、ひとりは巧みな弁舌をもつアジテーター、ひとりは正確無比の体内時計の持ち主、ひとりはスリの…

購書記録2022/9/10

【最近買った本】 2022/9/10 神奈川の某ブックオフにて。 吉岡栄二郎『「焼き場に立つ少年」は何処へ』(長崎新聞社) 有名な、ジョー・オダネル撮影の「焼き場に立つ少年」の写真が何者かを追ったノンフィクション。まだ読んでいないがNHKスペシャルみたい…

筒井康隆『恐怖』B-、伊島りすと『ジュリエット』B

【最近読んだ本】 筒井康隆『恐怖』(文春文庫、2004年、単行本2001年)B- とある町で連続殺人事件が起こる。どうやらこの町の文化人が狙われているらしい。となると次に狙われるのは自分ではないか――という恐怖に襲われた初老の作家が主人公。 あらすじを読…

購書記録2022/9/4

【最近買った本】 2022/9/4 千葉の某ブックオフにて。 河合隼雄『カウンセリングを考える(上・下)』(創元社) 河合隼雄の本は、読むと気持ちが軽くなって頭も良くなった気分になれる。 この本、買った帰りに「これもう持ってなかったっけ?」と不安になっ…

西村京太郎『十津川警部の休日』B、熊谷徹『なぜメルケルは「転向」したのか』B

【最近読んだ本】 西村京太郎『十津川警部の休日』(徳間文庫、2005年、単行本2003年)B 実は西村京太郎を初めて読んだのだが、意外に面白いし、読みやすい。 ただし文体は 十津川が組み伏せた相手は、突然、泣き出した。 十津川は、相手を放して、立ち上っ…

購書記録2022/8/27

【最近買った本】 2022/8/27 千葉の某ブックオフにて。 『東京路線バスの旅』(トラベルジャーナル) 普通の都バスの紹介本かと思ったら、著者が 宮脇俊三・枝川公一・泉麻人・奥本大三郎・イッセー尾形・佐々木幹郎・金井美恵子・森まゆみ・大槻ケンヂ・根…

早川いくを『態度がデカイ総理大臣-吉田さんとその時代』B、なめたけ『スーパーノヴァはキスの前に①』B

【最近読んだ本】 早川いくを『態度がデカイ総理大臣-吉田さんとその時代』(バジリコ、2010年)B 吉田茂の伝記。 吉田茂といえば戸川猪佐武の『小説吉田茂』のような名著があるのに、この上なにを加えようとしたのかというと、それがよくわからない。 戸川…

購書記録2022/8/20

【最近買った本】 2022/8/20 都内の某ブックオフにて。 児島襄『平和の失速 4~8』(文春文庫) 児島襄は、ほんの10年くらい前なら『平和の失速』8巻、『満州帝国』3巻、『朝鮮戦争』3巻、『ヒトラーの戦い』15巻、『日中戦争』3巻、『日露戦争』5巻、『大山…

三田誠広『堺屋太一の青春と70年万博』B、関容子『日本の鶯 堀口大學聞書き』A

【最近読んだ本】 三田誠広『堺屋太一の青春と70年万博』(出版文化社、2009年)B ふつうの評伝である。三田誠広は堺屋太一と特に親交があったわけではなく、これを書くために勉強を始めたレベル。編集者からの依頼で堺屋に長時間のインタビューをして、それ…

購書記録2022/8/12

【最近買った本】 2022/8/12 都内の某ブックオフにて。 伊坂幸太郎『モダンタイムス』(講談社) 『モダンタイムス』の単行本には、『モーニング』連載中の花沢健吾による挿絵を収録した特別版というものがあり、今回手に入れたのはその特別版。カバーの紙が…

沢木耕太郎『危機の宰相』A、さがら梨々・岡本健太郎『ソウナンですか?10』A

【最近読んだ本】 沢木耕太郎『危機の宰相』(文春文庫、2008年)A 池田勇人は、所得倍増計画をぶちあげ日本の高度経済成長をもたらした。そう言ってしまうと簡単であるが、日本経済がああも発展するなどと想像することすら難しかった時代に、なぜそんなこと…

購書記録2022/8/6

【最近買った本】 これから購入記録もつけてみる。他にも色々買っているが、その中からうれしかったもの。 2022/8/6 埼玉の某ブックオフにて。 赤川次郎<杉原爽香>シリーズより10冊 登場人物が年に1歳ずつ年を取っていくお話が毎年9月に刊行されるという、…

大下英治『小説田中軍団 上・下』B、八薙玉造『鉄球姫エミリー』B

【最近読んだ本】 大下英治『小説田中軍団 上・下』(角川文庫、1987年)B 時は1987年5月19日、ポスト中曽根をめぐり、最終的には首相になる竹下登と、彼と総裁の座を争って敗北する二階堂進(まったく知らなった)が決裂し、対決が決定的になるところから話…

雑喉潤『三国志と日本人』B、片岡義男『スローなブギにしてくれ』B+

【最近読んだ本】 雑喉潤『三国志と日本人』(講談社現代新書、2002年)B 日本における三国志の受容を紹介した本。太平記や八犬伝への三国志の引用、吉川英治版における史実と創作の比較などを紹介してなかなか面白いが、読んでいるとただネタを並べて見せて…

リットン・ストレイチー『エリザベスとエセックス』B+、三宅乱丈『fish』1巻B

【最近読んだ本】 リットン・ストレイチー『エリザベスとエセックス』(福田逸訳、中公文庫、1987年、原著1928年)B+ イギリスでは高名な伝記作家であるらしい。エリザベス一世(1533-1603)の晩年において女王の寵愛を受けながら、失態を重ねて巻き返そうと…

陳舜臣『インド三国志』B+、石持浅海『人面屋敷の惨劇』B

【最近読んだ本】 陳舜臣『インド三国志』(講談社文庫、1998年、単行本1984年)B+ ムガル帝国最大の版図を築きながら、同時に帝国の衰退の原因もつくったアウラングゼーブ帝を中心に、マラーター族を率いて生涯ムガル帝国を苦しめた英雄シヴァージー、イン…

北野勇作『どーなつ』B+、岡嶋二人『クラインの壺』A

【最近読んだ本】北野勇作『どーなつ』(ハヤカワ文庫、2005年、単行本2002年)B+ 何者かによる日常への侵略を、侵略された者たちの意識から描いているので、何が起こっているのかわかるようなわからないような、そういう連作短編集。 最近はどうだか知らな…

大島直政『ケマル・パシャ伝』A、アンナ・クラーク『ルースをさがして』B

【最近読んだ本】 大島直政『ケマル・パシャ伝』(新潮選書、1984年)A オスマン帝国のもとで史上空前の繁栄を謳歌しながら、宗教の制約による西洋の近代化に遅れをとり、列強の蚕食を受けそうなところを、軍事・政治両方の才能によりトルコ国民を率いて独立…

小野寺公二『平泉落日』A、井上恭介・藤下超『なぜ同胞を殺したのか ポル・ポト 堕ちたユートピアの夢』A

【最近読んだ本】 小野寺公二『平泉落日』(光文社文庫、1992年、単行本1968年)A 奥州藤原氏の滅亡というと、鎌倉時代を扱った歴史小説では話題としては外せないものの、たいていは秀衡と義経のあいつぐ死、頼朝自身による奥州討伐、味方の裏切りによる泰衡…

東野圭吾『犯人のいない殺人の夜』B+、吉野源三郎『エイブ・リンカーン』A

【最近読んだ本】 東野圭吾『犯人のいない殺人の夜』(光文社文庫、1994年、単行本1990年)B+ 東野圭吾の初期短篇集ということだが、どれも質が高い。とくに学生がかかわるものが良かった。表題作など大人のミステリはひねりすぎた感じがあるが、少年ものは…