DEEP FOREST/幻影の構成

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折原一『赤い森』(祥伝社文庫、2013年)の年表

赤い森 (祥伝社文庫)

赤い森 (祥伝社文庫)

 折原一『赤い森』は、もともと祥伝社文庫の『樹海伝説 騙しの森へ』(2002年)、『鬼頭家の惨劇 忌まわしき森へ』(2003年)と出版されたものを第1部・第2部として合本し、第3部に完結編として『赤い森 鬼頭家の秘密』を加えて『赤い森』(祥伝社、2010年)として刊行されたものである。
 森の奥深くにある山荘で起こったと言われる一家惨殺事件の噂を中心に事件が起こるが、折原一らしく事実関係がかなり錯綜しているので、まとめてみた。
 なお、姉妹編の黒い森は未読のため、読む機会があったら修正するかもしれない。
(以下ネタバレ)


・1990年頃*1 9月2日 赤羽一家殺人事件発生。東京都赤羽で鬼頭円蔵夫婦、次男夫婦、長女およびその娘が、長男の武彦およびその妻の眉子に殺害される。夫婦は失踪し、樹海の奥の山荘に住む。出張していた大学教授である長女の夫のみ生き残り、復讐を誓う。
・樹海の入口にある民宿の主人が、「樹海伝説」なる話を作って広める。森の中の山荘に住む売れない作家がスランプの末に一家を殺害し、森の奥に逃げこみ、依然逃走中というストーリー。多くの若者が好奇心をかきたてられ、山荘を目指して樹海に入り、何人かは遭難して死亡。
・ある若者が鬼頭武彦の住む山荘にたどり着くが、戻る途中に遭難して死亡。『遭難記』という手記を残し、多くの若者がそれを手に樹海に挑む。*2
・ハイキングクラブの若者たちが鬼頭武彦の山荘を目指す。再現劇のセットであるニセの鬼頭邸にたどり着き、部長とその恋人、彼女を狙うストーカーたちの間で争いになる。部長は部員の一人をストーカーと誤認して殺した末逃走、ストーカーは民宿の主人に見殺しにされて遭難死、救出された恋人は残って民宿の主人の妻になる。(第1部 樹海伝説*3
・2000年頃*4 長女の夫である「教授」が「樹海伝説」を聞きつけて鬼頭武彦ではないかと考える。復讐のため樹海に入るがあえなく遭難、記憶喪失の状態で民宿の主人に発見される。
・民宿の主人、教授の記憶を戻すためという名目で、「樹海伝説」をもとにした再現劇を行う。記憶は戻るが、殺人鬼が現れてスタッフの多くが殺され、教授は行方不明となる。(第2部 鬼頭家の惨劇)
・再現劇のセットが取り壊される。理由は不明。
・2005年頃 8月31日 教授、犯罪学研究会メンバーとともに鬼頭武彦宅を目指す。教授はニセ山荘を経て、ひとりで山荘にたどりつくが、鬼頭武彦と入れ違いで会えないまま樹海を脱出、鬼頭武彦は事件が時効になったのを確認し、事件の顛末を書いた小説を出版して一儲けしようとたくらむが、延長された公訴時効25年が自分にも適用されると思い込み、失意の内に山荘へ戻る。(第3部 赤い森)
・民宿の主人の語る「樹海伝説」に好奇心を持った若者たちがまた山荘を目指して樹海へ……


※鬼頭武彦と教授が入れ違いで会えなかったこと、双子の姉妹*5に二人とも斧をもって相対していることから、二人は二重人格の同一人物ではないかとも考えられるが不明。

*1:p.437などに、事件から15年目に時効が成立したと思っていたが、2005年に公訴時効が25年になったことの指摘があるため、第3部は2005年頃、事件はその15年前で1990年頃と考えられる

*2:実際はこれは民宿の主人の創作で、ニセの山荘へ誘導しているものと考えられる。ニセの山荘は第2部の鬼頭家事件の再現劇のために作られたようにも読めるが、記憶喪失の男の発見から再現劇まで2週間程度(p.288)であることから、ニセの山荘はもっと前からあったとみるべきだろう。

*3:第2部のp.295に妻の麻衣が登場していることから、第1部が時系列上は先になる

*4:第3部が2005年頃と考えると、p.160に「数年ほど前に新たな展開があってね」と主人が述べていることから2000年頃。

*5:鬼頭武彦ではなく民宿の主人の娘と考えられるが、p.438に10代半ばとも20歳すぎに見えるとも書いてあり不明確