萩原麻里『暗く、深い、夜の泉』B、同『月明のクロースター』B

【最近読んだ本】

萩原麻里『暗く、深い、夜の泉』(一迅社文庫、2008年)B

 閉鎖的な全寮制の高校が舞台。そこに転入した一人の少女を主人公に、最初はなんとなく赤川次郎のような雰囲気の謎めいた学園ミステリとして始まるが、学校の怪談、謎の生徒会長、生徒の自殺、超能力、前世の記憶、予知夢、ゾンビ、幼児虐待、七三一部隊、ネオナチといった伝奇小説の要素てんこ盛りの展開の果て、超能力者の一族とそれに対抗するスパイ組織の対決の歴史が浮かび上がる。300ページたらずの作品でここまで話が拡大するとは正直思ってもみなかったが、なかなか読ませる。ただ読む年齢的には学生の内でないとやや厳しいかもしれない。謎の転校生が実は高校生スパイだったという設定を30過ぎて読まされてもね。

 最初に学校の校則がでてきて、その中に学校に伝わる怪談について調べてはいけないという一条があるというのが、ツカミとして提示される謎なのだが、これが「自分が既に死者であることに気づいてしまう]」からというのは秀逸で、これ一つで短編ができそうである。これだけでなく細かいアイデアの宝庫で退屈はしないものの、話としてはバッドエンドであまり読後感はよくない。ちょっと百合っぽい雰囲気を見せながらもあまりそういう方面には立ち入らずに終わった感がある。

 もともとは2004年に講談社X文庫ホワイトハードでシリーズ2巻まで出たがそこでストップ、どういう経緯でか一迅社文庫で再刊したがこちらは1巻でストップ。2巻は読んでないが、怪談というのが八犬伝的なモチーフを持っているので、おそらくもっと続きの予定はあったのだろう。このままいくと政治小説ラノベになっていたかもしれずちょっと気になるが……

 

萩原麻里『月明のクロースター』(一迅社文庫、2008年)

 こちらは一迅社文庫での新作で、やはり閉鎖的な全寮制の学校が舞台。幼馴染みの少女が心に傷を負った事件の真相を探る主人公(男)が、旧校舎で真夜中に開かれる謎の集会の存在を知る。ピエロや獣の仮面をつけて興奮者(インフィアンマティ)や情熱者(アルデンティ)といったコードネームで呼び合い、校内で起こっている事件について話し合う神秘主義の儀式的な集会ということで、アニメの『STAR DRIVER 輝きのタクト』(2010年)を思い出してしまう。これはビジュアルで見たいなーと思いつつ(挿絵にも集会の様子は出てこない)、面倒なのでビジュアル描写を適当に流してたら、そこも物語の一つの要素になってて参った。

 高校3年とは思えない幼い感じの幼馴染が妹のように主人公を慕っている、というのは妙に美少女ゲームっぽいし、集会や校舎裏といった場面がまず設定され、その中でのキャラクターの会話から少しずつ事件の真相が見えてくるという進み方は、ノベルゲームを進めているような感覚になってしまう。これは偶然そうなったのか、レーベルを意識してのことなのか。そんな中で幼馴染が主人公の男子寮の部屋に忍び込んでくるのだが、ラッキースケベ的な「不可抗力」イベントもなく帰らせたのがかえって新鮮だった。

 『暗く、深い、夜の泉』は校内の事件と見えたものが社会の裏で繰り広げられる組織の闘争へと拡大する話だったが、こちらは校内全体を巻き込む陰謀が主人公と幼馴染の関係性に収束していく。まあ前作よりは順当なラストと思った。やはり裏生徒会みたいな組織に納得するのはある程度年齢の制約があるだろうが。

 全編に仮面のモチーフが散りばめられている他、色々なネタが見られるのは同じだが、主人公が「学生でなく教育実習生」というのは全く思いつかなかったので、ラストでやられたと思った。確かに年齢を考えると不自然さはなくもなかったのだが。