竹原漢字『気ままで可愛い病弱彼女の構い方』C、蘇部健一『ふつうの学校②』A
【最近読んだ本】
竹原漢字『気ままで可愛い病弱彼女の構い方』(富士見ファンタジア文庫、2016年)C
内容はタイトルの通りで、保健室登校の病弱な女の子と彼女の世話係になった「僕」が校内の謎に挑む日常系ミステリ――なのだが、とにかく「僕」の語りが読みにくい。
会長、と皆に呼ばれている女子である。僕の隣に座っているのも、彼女が「会長」という名字だからだ。嘘である。
とか、
一ページ目を開いた。
(2行略)
泊さんの小さな身体が、光を放ち始める。
(以下9行略)
――世界の様相が、一変した。
とかいうようなことは、当然起きたりしない。
のような面白くもないボケが随所にあっていちいち癇に障るし、「物語の結末を知る者(マスター・オブ・ブックエンド)」や「底なし沼のお人好し(スポイト・スポイラー)」のような(主人公が勝手につけているだけの)二つ名、それらの語りへのメタ的なツッコミ、明らかに好意を寄せているヒロインに鈍感を装う主人公、あちこちにみられる言葉遊び――と、それぞれの要素は西尾維新のフォロワーという感じなのだが、しかし西尾は圧倒的にストレスなく読みやすいのにこの違いは何なのだろうか。
アマゾンで見る限りこの文体はやはりかなり不評だったらしく、2巻目は多少抑え目にしたもののやはり不評、その後の作品はないらしい。文章自体はうまいし、真相もただの勘違いというオチだったりと多少ひねっているので、文体さえどうにかすれば何とか……と思っていたので少々もったいない気もする。
蘇部健一『ふつうの学校②』(講談社青い鳥文庫、2004年)A
蘇部健一の作品を久しぶりに読んだが、これは面白かった。家庭訪問や遠足など、最初はとりとめのないお話の連続に見える。しかし、日常の些細なエピソードを通して、さえないように見えて実は鋭い(かもしれない)教師や、頭はいいがどこかでツメが甘いクラスメイトなど、それぞれのキャラを印象付けて、最後のブラジャー盗難事件での彼らの行動に説得力をもたせていることが、読み終えてみるとわかる。
ミステリ風とはいっても多くはささいな悪戯に近いようなものばかりだが、一枚の古い写真から祖母の初恋の人を探し出すような本格的な人探しのエピソードもあったりして、意外に密度の濃い作品集になっている。ただまあ、メインキャラの型破りな教師が、あまりに悪ガキじみているのはちょっと今読むのはきついものがあるかな……