とこみち『君が肉になっても』A、V・C・アンドリュース『オードリナ(上・下)』B

【最近読んだ本】

とこみち『君が肉になっても』(ヤングジャンプコミックス、2020年)A

 『見える子ちゃん』の二番煎じのようなものを予想して読んだら、独自の世界を構築していて面白かった。ジャンルの上では百合でホラーということになるのだろうか? 眠ると、肉の塊のような化物になって人を喰うようになってしまった女の子と、それと知りつつ彼女と一緒にいようとする女の子の話である。

 画風の問題もあるのかもしれないが、特に後者の女の子が変で、怪物になった友人がどれだけ危険な存在になっても、無表情に近い笑顔で、なにか理屈をつけてやりすごしたまま日常を続けようとする。化物になった友人が猫を食べたことについて、うちの猫じゃないから良いとか。その中で、彼女は友人のことが本当に好きであるということに気付いていく。けなげとも違うし、単純に狂気とも違う、淡々とした奇妙な読み心地である。読者は――時に主人公も、すべては後になって知る。死んだ子が実は彼女たちの親友だったこととか、世界は滅んでしまったことも後になって知る。すでに決まったことを受け入れることを繰り返して、淡々と進んでいく。

 おもしろいと思って読んでいたら、1巻で完結とのこと。もったいないことである。

 

V・C・アンドリュース『オードリナ(上・下)』(中川晴子訳、サンケイ文庫、1986年、原著1982年)B

 昔はブックオフにいくらでもあったアンドリュースの作品群も、買わないでいるうちにすっかり見なくなってしまった。

 本書は、シリーズものの多いアンドリュース(およびその後継者)の作品の中で、唯一単巻のものである(これも最近になって続編が出たが)。

 ジャンルとしては、ゴシックロマンスでサスペンスホラーということになるだろうか。9歳の幼さで不幸な事故で亡くなった姉・オードリナと同じ名をもち、彼女の生まれ変わりとなるべく運命づけられた少女・オードリナと、彼女をとりまく一族のおりなす愛憎劇である。

 独善的な父、いじわるな従姉と伯母、優しいが無力な母たちとともに森の奥の屋敷に暮らしている。外界との接触を禁じられ、夢うつつのような不思議な感覚のなかで生きる彼女は、しかし成長するにつれ、近所に住む少年との出会いや従姉の家出、不思議な力をもつ妹の誕生といった事件を通して、自分のおかれた世界の不自然さと異常さに気付いていく。

(以下ネタバレ)

 9歳で近所の少年たちに強姦されたオードリナを「救う」ため、家族が示し合わせて時間感覚を狂わせ、自分が別人のオードリナであると思い込ませるようにした、という真相は、綾辻行人の某作品を想起させるが、これがヒントになったということはないのだろうか。

 ゴシック小説が超自然的なものへの畏怖が必要不可欠なものとしてあるのであれば、すべての「運命」があくまで人工的なものでしかない本作はアンチ・ゴシックと言えなくもない。それでも彼らはそれに縛られて生きざるを得なかったところに哀しみがある。