赤川次郎『群青色のカンバス』B、松林頂『ゾンビバット』B

【最近読んだ本】

赤川次郎『群青色のカンバス』(光文社文庫、1989年)B

 杉原爽香シリーズの第二弾。一作目から一年たち、16歳になった爽香が、高校のブラスバンド部の合宿先で事件に巻きこまれる。

 登場人物が一年ずつ年を取っていくというコンセプトで、前作のキャラクターもみんな登場するが、みんな同じ高校のブラスバンド部に入り、中学時代の担任とも連絡を取りあっているのはさすがに無理を感じる。それでもすでに固定メンバーというべき安定感がある。

 そして第一作では親友と父親の近親相姦や組織的な売春組織の暗躍と重いテーマが描かれていたのに対し、本作では刑務所から帰ってきた父殺しの青年と彼を不信の目で見る町の住人、彼の帰りをずっと待っていた精神の不安定な妹、そして彼女を誘惑していた、都会で事件を起こして人目を避けこの町へ来た悪意に満ちた老画家――と、こちらもかなり重い。

 伝奇的な道具立てで、いくらでも陰惨な長編がつくれそうなところを、赤川次郎は杉原爽香の持前の明るさや洞察力、行動力を頼りに、300ページ程度でまとめてしまう。やや洞察力に頼りすぎなきらいはあるし、殺人事件の果てに残された者たちの未来は決して明るいとは思えないが、とにかくその場の事件は解決してみせる。この辺はシリーズものでも容赦がない。

 

松林頂『ゾンビバット』(全3巻、メテオコミックス、2018年~2019年)B

 バットを振るってゾンビを倒すセーラー服少女、というイメージから始まったのだろう本作は、やはり画風が作品世界と合っているのが強い。トーンよりも描線で陰影が印象的に描かれ、キャラがアップになるとかえって輪郭線が荒くなることで、悪い夢を見ているようなビジュアルになっている。

 お話としては、ゾンビになった街の人間たちを、母も含めて自らの意志で殺すことを選んだ少女と、そんな悪意と混沌が秩序となった世界でなお人を愛し、ゾンビになった母をかくまおうとする少女が対比され、それはそのまま、崩壊した世界がずっと続くことを望む人間と、元の日常を取り戻すことを望む人間の対比という構図になっていく。だが、このビジュアルの前では、前者のほうが圧倒的に説得力をもってしまうように思える。ある意味では画集のように、崩壊後の世界の風景をたのしむような気分が、読んでいるあいだにあった。実際に画集が出るならぜひ欲しいものである。

 とはいえ、本作は3巻で唐突に事態の終焉をみて終わってしまう。3巻目には、彼女たち以外の、やはりこの崩壊した世界をたのしむ少女たちが出てくる。もしかしたら、この世界を受け入れてさまざまに生きる人々をロードムーヴィー的に描く構想だったのではないかと思わなくもない。