DEEP FOREST/幻影の構成

読書記録。週2冊更新。A:とても面白い B:面白い or ふつう C:つまらない D:読むのが有害

東野圭吾『犯人のいない殺人の夜』B+、吉野源三郎『エイブ・リンカーン』A

【最近読んだ本】

東野圭吾『犯人のいない殺人の夜』(光文社文庫、1994年、単行本1990年)B+

 東野圭吾の初期短篇集ということだが、どれも質が高い。とくに学生がかかわるものが良かった。表題作など大人のミステリはひねりすぎた感じがあるが、少年ものは青春ものとしてもミステリとしてもレベルが高くて感心する。とくに「踊り子」が、真相が残酷で印象に残る。

 

吉野源三郎『エイブ・リンカーン』(童話屋、2003年、原著1949年)A

 『君たちはどう生きるか』で有名な吉野源三郎によるリンカーン伝。

 子ども向けの伝記というのは質の高いものが多くて、これも例外ではない。ちょうど書いていたころに満州事変があって、それへの義憤から、よく似た侵略戦争であるメキシコ戦争について詳しく描いている、などといった裏話もある。リンカーンの妻が妙に虚栄心高く描かれているのがちょっと引っかかったが、スティーヴン・ダグラスとの確執や、奴隷売買の子ども向けとは思えないほど残酷な描写など、大人にも十分に読めるものである。