DEEP FOREST/幻影の構成

読書記録。週2冊更新。A:とても面白い B:面白い or ふつう C:つまらない D:読むのが有害

ヱヴァ破を観てきた。


まあやっぱり、TV版も旧映画版も観ないで観るのは無謀だった、ということで。


なんていうか、わかりやすく言えば、シティーハンターを一冊も読まずにエンジェルハートを読まされた人間の気分である。
確かに単体としても面白いんだけど、それとは別に旧作を観て自分の一部にまでした人にしかわからない「本当の面白さ」が多分あるのだ。
それはどうしても、はるか昔マンガ版を途中まで読んだだけの僕にはわからなかった。
旧作の基本的なストーリーは知識としてあるから、変更点は指摘できるけど、
そこが違うから何だというのか、というのは僕にはよくわからない。
結果、映像のクオリティがやたら高いアニメを観た、という感覚だけが僕にはある。


ストーリー的には、鶴巻和哉の言ってるエピローグや予告の衝撃とか当然なかったし、ラストはカタルシスはあったものの、要するにシンジがキレたら勝ちなの?とか思ってしまった。
そりゃ、見る人が見れば前半と後半を境にシンジは著しく成長してたのかもしれないけれども、僕にはそんなのよくわからないよ。
動くはずのないエヴァがシンジがキレたことで奇跡が起こって勝手に動きだして、なんかわからないけど綾波が助かった、てだけで、
綾波の助かり方は物理的空間を完全に無視してるとか、そういうことを言っても野暮なのはわかってるけど、あの世界で肉体って何なのだろう。
パンフレットは鶴巻がインタビューで「○○が××になっていて驚かれたと思います」とか旧作を観てない人間にはどうでもいい話ばっかりしていて心底ウザかった。
言及されていた新しい場面は、旧作にもこういう場面があったかもしれないな、くらいしか思わなかったところばかりだったし。
旧作を知らない人間は完全に蚊帳の外、である。


新キャラは、よくわからなかったが、
相楽直哉「RELEASE」(電撃コミックス)のマサキを思い起こさせる、とか言っても誰にも通じないのが悲しい。
余裕も能力も生きる意志もありながらどこか破滅を望んでいそうなところが、なんか似ている。


あと、戦闘の演出は、CMで観て楽しみにしてたのだが(空から落ちてくる使徒を受け止めるべく走って行くシーン)、
実際に観てみると、全体としてそんなに好きになれなかった。
うまくいえないが、なぜかみんな複雑かつ曲線的に動くのである。一直線に走っていくシーンでさえエヴァの体中が複雑な動きをしていて、同様の印象を受けた。
僕はアクションシーンは単純かつ直線的な動きのほうが好きで、たとえばコードギアスでは、
左右に複雑な動きをしながら迫ってくるランスロットよりも、槍を構えたまま一直線に突撃してくるコーネリアのナイトメアの方がカッコよくみえた。
まあ大抵ロボットは高性能になるにつれ、動きや構造が単純から複雑へと変わっていくのがセオリーらしいので仕方ないのかもしれないが。
(「わたしは真悟」について、楳図かずおがそんなことを言ってた気がする)


むしろ僕が楽しんだのは画面いっぱいに細部まで描き出された、自然の風景や海洋生物保全施設(正式名称知らない)の描写である。
あれは映画館のスクリーンで観てこその迫力だろう。少なくともそこは観てよかった。高密度な空間を存分に楽しむことができた。
ただ、みんな感動してるらしい大仕掛けに変形していく都市はなぜか未だに好きになれない。
あのビルって、大きさ(および重々しい感じの描き方)の割に動きが速すぎる気がして見るたびに嘘っぽいのだが、
演出の都合なのか、実際につくるとあんなものなのか。


まあコレ、批判というか、好き嫌いの話しかしてないよな。
実は使徒のデザインが一つも好きになれない、とか。
この辺は馴れかもしれない。



あとすごく個人的なことを言えば、あの場面で「今日の日はさようなら」流すのはヒドイ。趣味悪すぎ。
幼稚園で毎日帰りの時間に流れてた歌だったので、当時の曖昧ながらさまざまな記憶が甦って非常に危なかった。
いや、別にものすごく暗い過去があるわけじゃなくて、いたって平凡な幼稚園児だったけど、それでも何か色々と。
少なくともあの場面だけは、また観るとしても二度と観たくない。そこだけ目を閉じ耳を塞ぐ。
……その意味では僕にとってはトラウマものの映画なのかもしれない。
もしかしたらあの場面がなかったらもう少し印象が良かった可能性はある。



と、以上のようなわけで、初見の人には用がないことはよくわかったので、おとなしくエヴァ再放送を観ようと思った。
録画はしてあるので。きっと次が公開されるまでには自分の中で咀嚼できているに違いない。