DEEP FOREST/幻影の構成

読書記録。週2冊更新。A:とても面白い B:面白い or ふつう C:つまらない D:読むのが有害

2011-01-01から1年間の記事一覧

映画『アンジャリ』を観た。 1990年インド映画、インド国立映画祭タミル語映画賞受賞、という物珍しさにレンタル落ちを買ってきた(DVDは出ていない)。インド映画と言ったら『踊るマハラジャ』くらいしか聞いたことがない(観たことはない)が、あれと同様…

『新・猿の惑星』(1971年、ドン・テイラー監督)を観た。 『猿の惑星』『続・猿の惑星』に続く第3作。 (以下ネタバレあり) 未来の地球は人類文明は衰退し、猿が支配していた。前作でコバルト爆弾により地球は滅亡したが、ギリギリのタイミングで三人(?…

ここ2,3ヶ月ほど、原因不明の下顎の痛みで悩んでいた。なぜ痛いのかわからないまま、痛みは右や左や上や下やあちこちに飛んで、果ては頭痛にまでなっていたので、医者も首を捻っていたのだが、この前奥歯に虫歯が見つかった。そうやって病根が特定されたと…

レン・デイトンの『イプクレス・ファイル』を読んだ。 作者は、今ではすっかり忘れられているが、かつてはジョン・ル・カレとともにスパイ小説の新時代を築いたとまで言われた人気作家である。当時、スパイ小説界の詩人、あるいはスパイ小説のカフカなどと賞…

ハリイ・ハリスンの『人間がいっぱい』(浅倉久志訳、ハヤカワSFシリーズ、原題MAKE ROOM! MAKE ROOM!、1966年)を読んだ。 舞台は2000年を目前にひかえたニューヨーク。世界人口は増加の一途をたどり70億を突破、世界中の都市が過密化し、エネルギー不足…

『驚異の地底王国シャンバラ』(廣済堂出版、1994年)を読んだ。 シャンバラとは、チベットの地下に眠るという伝説の楽園。 本書はその王国の謎を追う日本探検協会が突き止めた真実を明かす――というようなことが内容紹介には書いてあるのだが、予想に反して…

『君と僕。』の1話を観た。 とりあえず春はもう少し高い声をイメージしていたのと、原作1巻で茶道部の見学に行ったときは、春はなぜか当然のように女物の着物を着て出てきたのに、それがなくなって男物の着物を着ていたのが不満。あれって何か問題があるの…

アンドニス・サマラキスの『きず』(創元推理文庫)を読んだ。 作者は1919年生まれのギリシャ人。ナチスドイツによるギリシャ占領下ではレジスタンスとして活動し、戦後は外交使節も務めた。作品はもちろんギリシャ語で書かれ、小池滋が原典に加えて英訳版、…

ah, let us pass over as quickly as possible the most painful chapter of my life! ――Egon Hostovsky,"The Hideout" 極秘任務でパリ滞在中に、ナチスが故郷のチェコスロバキアへ侵攻したことを知った主人公の叫び

高河ゆん『飢餓一族』(学研ピチコミックス)を読んだ。 高校2年の花園聖子は、文芸部部長として部誌の編集に熱心だが、自分は作品を書いていない。それは、文章を書くとひどく「おとめちっく」なものになってしまい、小説家の母親に笑われてコンプレックス…

処置をしたあとの奥歯がまだ痛む。 時折にぶい痛みが思い出したようによみがえって、1ヶ月に一回くらい酷くなるので、そのたびに歯医者に行く。だが医者も原因がわからないという。そういう歯痛というのは意外にあって、季節の変わり目などに多いのだそうだ…

江戸時代の陽明学者・大塩平八郎が起こした反乱の真相とその顛末を描く。 主人公の光武利之は、御庭番衆の統括者・村垣定行の妾腹の子として生まれた。彼は剣術はかなりの腕前だが、人生に打ち込むべきものを見出せず、特に仕事をするでもなく無為の日々を過…

注・BL小説 篠野碧『プリズム』(ディアプラス文庫、2001年)を読んだ。 BL小説には珍しく、恋愛に女の子がメインキャラとして絡んでくる。カラー口絵にまで出てくるので、むしろ彼女が最後にどうなるのか気になって読んだ。 高校生の稔人(みのる)は、親友…

大佛次郎の『由比正雪』(徳間文庫)を読んだ。上下巻。 江戸時代、軍学者・由比正雪は私塾を開き、3000人近い門弟を集めていた。彼は徳川家光の死の直後を狙って反乱を画策するが、実行を目前にして発覚してしまい、一味は自殺する。 史上名高い慶安の…

フレドリック・ブラウンの『霧の壁』を読んだ。 読んでいる間は少々退屈で、田中小実昌の訳のおかげで読み進めていったが、最後になってそれもまた仕掛けの一つだったことが判明して、やはり流石である。 主人公の「ぼく」は、気がついたときには直前までの…

コリン・ウィルソンの『黒い部屋』を読んだ。オカルト研究で名高い著者の唯一のスパイ小説。 キーワードとなる「黒い部屋」というのは実在した心理実験である。音や光を外界から遮断した部屋で長時間すごして、人間に与える影響を調べる。最初の一日は、外界…

山岡荘八『吉田松陰』(講談社文庫全2巻)を読んだ。 全体に説教臭いというか、読者への教訓として時代小説を書いているのがわかりやすすぎる。山本有三の『路傍の石』でも読んでいるような気分であった。もっと若いときに読めば感銘を受けたのかもしれない…

ボーダーランド文庫の『オデュッセウスの宇宙船』(ピーター・コロージモ)を読んだ。 表紙から、オデュッセウスの冒険は実は宇宙旅行だった!……という話かと思ったらそうではなく、オデュッセウスが出会った化け物たちは、太古の昔に地球に飛来した宇宙人だ…

ポール・オースターの『幽霊たち』(柴田元幸訳、新潮文庫)を読んだ。 私立探偵のブルーはホワイトの依頼をうけてブラックという男の監視を始める。 創作メモでも読んでいるような気分。事実の積み重ねとそれに伴う感情が、勿体ぶることなく淡々と語られる…

ロシアに行っていた。7月21日から8月22日までの1ヶ月間。 モスクワは暑かった。 最初の週は連日最高気温が36度だった。 モスクワは広いので、陽を遮るものもない。じりじり焼かれながらバスを待っていた。 で、土日に雨が降って、次の週は14度まで下がった。…

『嵐が丘』を読んだら、原題は「ウェザリング・ハイツ」と書いてあって、プラモデル用語のウェザリングを思い出して納得したのだが、改めて確かめてみると嵐が丘は"Wuthering"(激しく風が吹く)で、プラモの方は多分"weathering"(風化作用)なので、違った…

昨日は帰宅するなり吐き気がしてずっと寝ていた。 多分カフェインのとりすぎだと思うのだが、この場合眠ることすら出来ないのでつらい。 どうもカフェインをとった後に刺身や寿司を食べると、数時間ほど経って気持ち悪くなるような気がするのだが、因果関係…

最近夏目漱石の小説を何作か読んだ。 漱石の小説は、安っぽい大衆小説のようなところがある。 物語の現在は常に「その後」である。『こころ』の先生や『門』の宗助は、過去に既に決定的な事件を経験し、それを背後に隠した、しかしその大きな影を負っている…

吉川英治の『私本太平記』(講談社・吉川英治歴史時代文庫)を読んでいる。 とりあえず今2巻で、日野俊基ら公卿による二度の幕府打倒計画の失敗、後醍醐天皇と皇子たちの京都脱出を経て、いよいよ楠木正成や足利尊氏らが挙兵するというところ。 尊氏を起点に…

柳父章『翻訳語の論理』(法政大学出版局、1972年)を大学図書館から借りて来て開いたら、「『社会』という言葉は知識人の間では常用語だが、一般の家庭ではまず用いられず、『世の中』や『世間』という言葉が普通である」という主旨の文章に対し、 "ma fami…

夢に亡くなった祖母が出てきた。 祖母の家で、親戚みんなで、これってどうすればいいんだっけ? と悩んでいたら、祖母がふらりと現れて、これはこうすればいいんだよ、と言って、あっさり解決して、ああ、そうかあ、とみんなで喜んで、祖母はニコニコしなが…

雨宮処凛『なにもない旅 なにもしない旅』(光文社知恵の森文庫)を読んだ。 内容は読んで字の如し。ぼくは旅先では何をすればいいのかわからず困ってしまうタイプなので、そんな状態を楽しむヒントでもあれば、と思って読んでみたのだが…… 収録されているほ…

図書館学の資料に、「名古屋市瑞穂図書館における1974年の児童図書の予約ベスト15」というリストがあった。 タイトルは以下の通り。 1.頭のトレーニング(学研) 2.世界のびっくり情報(同) 3.怪奇ミステリー(同) 4.円盤写真大図鑑(黒崎出版) 5.忍術・…

金曜日は祖母の葬儀だった。 そういえばちょうど祖母が危篤だった頃に親知らずが痛みだし、亡くなった日にそれはピークに達し、その日を境にぴたりと痛みがなくなった。 とはいえそれは、ずっと放置していた虫歯が悪化して化膿したためであり、亡くなった日…

スパイ小説・『反転したテスト・ミサイル』(原題:Samarcand Dimension、デイヴィッド・ワイズ著、新潮文庫)を読んだ。 東西冷戦の真っ只中、アメリカは最新鋭ミサイルの試写を極秘裏に行っていた。最新科学の成果の結集により、軌道の誘導がある程度可能…