2020-01-01から1年間の記事一覧
冒険小説の大家であるデズモンド・バグリィ(1923~1983)に『南海の迷路』(原題Night of Error)という作品がある。 彼の死後に出版された真の処女作、といういわくつきの作品である。彼は1962年にこれを書き上げたがなぜか出版せず、悪漢たちがナチスの残し…
【最近読んだ本】 安岡章太郎『サルが木から下りるとき』(角川文庫、1974年、連載は朝日新聞1970年)B 安岡章太郎というのは、文壇の大御所的な存在であったにもかかわらず、どちらかといえば地味な印象がある。小説やエッセイを読むと、起こったことを順に…
【最近読んだ本】 小林秀雄『栗の樹』(講談社文芸文庫、1990年)A 小林秀雄を読むときは、デジャヴのような気持ち悪さに悩まされる。何しろ重複が多いのだ。たとえば有名な「無常という事」は、収録されている本を文庫で調べてみただけでも、 『無常という…
【最近読んだ本】 塚本青史『始皇帝』(講談社文庫、2009年、単行本2006年)B 咲村観『始皇帝』(PHP文庫、2007年、単行本1983年)B 始皇帝の伝記小説が相次いで手に入ったので続けて読んでみたが、描かれる人間像は驚くほど似ている。ひどく暗いのである。 …
【最近読んだ本】 斎藤肇『<魔法物語>シリーズ』A 『魔法物語 上 黒い風のトーフェ』(講談社文庫、1993年、単行本1990年) 『魔法物語 下 青い光のルクセ』(講談社文庫、1993年、単行本1990年) 『新・魔法物語 竜形の少年』(講談社文庫、1996年) 『魔…
【最近読んだ本】 星新一『白い服の男』(新潮文庫、1977年8月)A 久しぶりに読んだ。ショートショートとしてはやや長めだろうか。 よく言えば寓話的、悪く言えば単純で、メッセージがわかりやすすぎるきらいはあるが、それだけに後に生まれた色々な物語の原…