DEEP FOREST/幻影の構成

読書記録。週2冊更新。A:とても面白い B:面白い or ふつう C:つまらない D:読むのが有害

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

三好徹『政商伝』A、童門冬二『冬の火花 上田秋成とその妻』B

【最近読んだ本】 三好徹『政商伝』(講談社文庫、1996年、単行本1993年)A あまり知られていないが、三好徹は歴史小説の名手である。史料を丹念に読みこみ、自身の見解も交えながら、小説としても面白く仕上げてみせる。なにより、比較的短いのが良い。やは…

三好徹『幕末水滸伝』B、林青梧『足利尊氏(上・下)』A

【最近読んだ本】 三好徹『幕末水滸伝』(光文社文庫、2001年、単行本1998年)B 史伝小説の多い三好徹の中では珍しく、架空の剣士・香月源四郎が主人公。幕末の江戸で剣の道を追究する彼を狂言回しに、福沢諭吉・小栗上野介・勝海舟・清河八郎・中村半次郎・…

塚本青史『仲達』B-、パトリシア・カーロン『行きどまり』B

【最近読んだ本】 塚本青史『仲達』(角川文庫、2012年、単行本2009年)B- 司馬懿仲達が主人公という珍しい小説。司馬懿ははたらきが大きい割に、前面に出てくるのがやや遅いのと、諸葛亮の人気のせいか、不遇な人である。本作は曹操の死の直後からはじまり…

神坂次郎『秘伝洩らすべし』B、ジェイムズ・デラーギー『55』B

【最近読んだ本】 神坂次郎『秘伝洩らすべし』(河出文庫、1986年)B 薄くて読みやすいが、クセの強い短編集である。 神坂の代表作である『元禄御畳奉行の日記』は、実在の日記を読み解くことではなやかな元禄時代の陰の部分をあばきだしてみせたが、本書で…

内海隆一郎『波多町』B、秋田禎信『愛と哀しみのエスパーマン』B

【最近読んだ本】 内海隆一郎『波多町(なみだまち)』(集英社文庫、1997年、単行本1992年)B 変な小説である。平凡な男がある町を訪れ、町の住人の策略で帰れなくなるという、カフカ的というか、個人的には眉村卓を彷彿とさせるはじまりで、好きなシチュエ…