2019-01-01から1年間の記事一覧
【最近読んだ本】 早乙女貢『志士の肖像(上・下)』(集英社文庫、1995年、単行本1989年)A 14歳という最年少で松下村塾に入塾し、幕末から明治維新の動乱を生き抜き、明治政府では陸軍中将や司法大臣として活躍した、山田顕義が主人公。彼は明治時代には会…
【最近読んだ本】 矢野隆『我が名は秀秋』(講談社文庫、2018年、単行本2015年)B 関ヶ原の戦いにおける家康の勝利に最大の貢献をした一人ながら、裏切り者として軒並み評判が悪い、小早川秀秋が主人公。 司馬遼太郎の『関ヶ原』などでは、自分がやったこと…
【最近読んだ本】 大江健三郎『奇妙な仕事・飼育』(新潮文庫、1959年、単行本1958年)A 大江健三郎は初期作品が良い、というと大抵賛同が得られるのだが、本書を久しぶりに読んで、やはり名作揃いであると思った。それは何故か考えてみると――江藤淳の解説で…
【最近読んだ本】 滝口康彦『流離の譜』(講談社文庫、1988年、単行本1984年)B+ 歴史小説では、長州征伐の指揮官として大軍を率いて出征するも、高杉晋作や大村益次郎に翻弄され、あげく将軍家茂の死に動揺してろくな戦果もあげずに兵を引き上げてしまった…
【最近読んだ本】 アンナ・カヴァン『氷』(山田和子訳、ちくま文庫、2015年、原著1967年)B 異常な寒さが続き、終末が予感されている世界を舞台に、ある少女と彼女を追って旅する男を描く。少女と呼ばれているが読んでいたら21歳ということがわかってちょっ…
【最近読んだ本】 津本陽『わが勲の無きがごと』(文春文庫、1988年、単行本1981年)B 短いながら密度の濃い作品。ニューギニアに出征して帰還した義兄が戦争で何を見てきたのか――武道に優れた尊敬する義兄が、度を越した慇懃さと用心深さ、人間不信を兼ねそ…
【最近読んだ本】 柚木麻子『終点のあの子』(文春文庫、2012年、単行本2010年)B 都内にあるプロテスタント系女子高に入学した生徒たちの青春を描いたデビュー作「フォーゲットミー、ノットブルー」(オール讀物新人賞受賞作)と、その続編にあたる3作品を…
【最近読んだ本】 岬兄悟『あたしがママよ』(角川文庫、1986年)B 見事にワンパターンな短篇集である。まず、 ①現状に不満を持つ人がいて、 ②それを脱出する糸口としての超常現象が起こるが、 ③最後にしっぺ返しを食らう。 不満を持っている人の性別や境遇…
【最近読んだ本】 酒見賢一『泣き虫弱虫諸葛孔明 第壱部』(文春文庫、2009年、単行本2004年)B タイトルは井上ひさしの『泣き虫なまいき石川啄木』のオマージュか。「泣き虫弱虫」などというから、いくじなしの孔明が、追い詰められてヤケクソの策がうまく…
【最近読んだ本】 東野圭吾『天空の蜂』(講談社文庫、1998年、単行本1995年)B 爆薬を載せた無人のヘリが原発の上空をホバリングし、日本の全原発の停止を要求する――という、地味に工作員が忍び込むのと比べて派手で効果も高そうな「その手があったか!」と…
【最近読んだ本】 奈良本辰也『もう一つの維新』(徳間文庫、1985年、単行本1974年新潮社)A 尊王と佐幕、攘夷と開国の対立を乗り越えるヴィジョンをもった「航海遠略策」を提出し、一時は幕末の政局を主導するかに思われた長州藩重臣・長井雅楽の一瞬の栄光…
【最近読んだ本】 赤川次郎『台風の目の少女たち』(ハルキ文庫、2012年)B 夫も娘も捨てて不倫の末駆け落ちをしようとしていた女性が、大型台風の接近によりそれを阻まれる――というところから物語が始まる。嵐を避けて、山間の町の人々は近くの体育館を避難…
【最近読んだ本】 宇津田晴『俺の立ち位置はココじゃない!』(ガガガ文庫、2017年)B 男らしくなりたいのに「姫」と呼ばれている少年と、女らしくなりたいのに「王子様」と呼ばれている少女が出会い、「理想の自分」を目指して協力して奮闘するコメディ。 …
【最近読んだ本】 源氏鶏太『永遠の眠りに眠らしめよ』(集英社文庫、1985年、単行本1977年)B サラリーマン小説の草分け的存在として知られる源氏鶏太が、作家人生の後期に手掛けた怪奇小説のひとつ。 主人公は、ある日突然、社長の急死によりその後釜に座…
【最近読んだ本】 小田実『ガ島』(講談社文庫、1979年、単行本1973年)B 遺骨収集という名目で金儲けのクチを求めてガダルカナル島を訪れた大阪商人が、ジャングルで遭難し、彷徨の末に幻覚の中で日本軍の一兵卒となり、ガ島=餓島の激戦の悪夢を見る。今で…
【最近読んだ本】 萩原麻里『暗く、深い、夜の泉』(一迅社文庫、2008年)B 閉鎖的な全寮制の高校が舞台。そこに転入した一人の少女を主人公に、最初はなんとなく赤川次郎のような雰囲気の謎めいた学園ミステリとして始まるが、学校の怪談、謎の生徒会長、生…
【最近読んだ本】 池波正太郎『幕末新選組』(文春文庫、1979年、単行本1964年)B 永倉新八が主人公の新選組小説。なぜ永倉なのかについては、解説の駒井晧二は、根っからの江戸っ子である永倉の生きざまを池波が気に入ったからであろうと推測している。江戸…