DEEP FOREST/幻影の構成

読書記録。週2冊更新。A:とても面白い B:面白い or ふつう C:つまらない D:読むのが有害

2021-01-01から1年間の記事一覧

松岡圭祐『高校事変』B、松尾スズキ『宗教が往く』(上下巻)B

【最近読んだ本】 松岡圭祐『高校事変』(角川文庫、2019年)B 総理が訪問中の武蔵小杉高校を、突如として謎の武装集団が占拠する。情け容赦なく生徒や教師が殺され、かろうじて身を隠した首相も外部と連絡を絶たれ孤立する中、難を逃れたある少女がひそかに…

赤川次郎『群青色のカンバス』B、松林頂『ゾンビバット』B

【最近読んだ本】 赤川次郎『群青色のカンバス』(光文社文庫、1989年)B 杉原爽香シリーズの第二弾。一作目から一年たち、16歳になった爽香が、高校のブラスバンド部の合宿先で事件に巻きこまれる。 登場人物が一年ずつ年を取っていくというコンセプトで、…

赤川次郎『若草色のポシェット』B、松岡圭祐『カウンセラー』B

【最近読んだ本】 赤川次郎『若草色のポシェット』(光文社文庫、1988年)B 1年に1冊刊行し、登場人物がそれとともに年を取っていくというコンセプトで、今年めでたく48歳となった主人公・杉原爽香の、記念すべき15歳の第一作である。 15歳ながら、不登校ぎ…

あまのあめの『ピンクロイヤル』B、メアリ・W・ウォーカー『凍りつく骨』B

【最近読んだ本】 あまのあめの『ピンクロイヤル』(全2巻、MeDuコミックス、2019~2020年)B 戦隊もので変身ヒロインものである。昔戦隊ものが好きだった女の子が、ある日突然、戦隊ヒロイン・ブキレンジャーのピンクアローとして戦うことになる。最近の魔…

桐野夏生『顔に降りかかる雨』B、ディーン・R・クーンツ『ファントム(上・下)』B

【最近読んだ本】 桐野夏生『顔に降りかかる雨』(講談社文庫、1996年、単行本1993年)B 桐野夏生としての実質的なデビュー作。実は桐野夏生自体がちゃんと読むのは初めてなのだが、それをもったいなかったと思うくらいの面白さはあった。もともとベテランで…

とこみち『君が肉になっても』A、V・C・アンドリュース『オードリナ(上・下)』B

【最近読んだ本】 とこみち『君が肉になっても』(ヤングジャンプコミックス、2020年)A 『見える子ちゃん』の二番煎じのようなものを予想して読んだら、独自の世界を構築していて面白かった。ジャンルの上では百合でホラーということになるのだろうか? 眠…

真梨幸子『縄紋』B、ジョン・スミス『スカイトラップ』A

【最近読んだ本】 真梨幸子『縄紋』(幻冬舎、2020年)B イヤミスの名手として名高い作者による、400ページにおよぶ伝奇ホラーということなのだが、あまり楽しめなかった。伝奇小説というのは多分にロマンを楽しむものであり、一方で真梨幸子の本領であるイ…

矢部嵩『紗央里ちゃんの家』B、佐神良『僕らの国』B

【最近読んだ本】 矢部嵩『紗央里ちゃんの家』(角川ホラー文庫、 年)B 「僕」が毎年恒例で訪れる親戚の紗央里ちゃんの家は、小学5年の年はどこか違う。祖母がいつの間にか亡くなっていたと知らされ、紗央里ちゃんはおらず、出迎えた叔母は包丁をもって血ま…

購書記録211023

【最近買った本】 なんだか、最近ブックオフは良い本がなくなってしまったなどと、バカにされて当然の扱いばかりなのが、ブックオフばかり行っている身としては癪なので、備忘録も兼ねて買った本のメモを挙げてみる。コミックなど最近のものは割愛する。 10…

近藤雅樹『霊感少女論』B、落合信彦『崩壊 ゴルバチョフ暗殺』B

【最近読んだ本】 近藤雅樹『霊感少女論』(河出書房新社、1997年)B 甲南大学・松山大学・甲子園短期大学などで民俗学や人類学を教えるなかで得られた心霊体験を分類・分析してまとめた本。 さまざまな心霊体験の事例集としては面白い。冒頭にエピグラフの…

佐々木俊尚『「当事者」の時代』A、フランク・ティリエ『シンドロームE(上・下)』B

【最近読んだ本】 佐々木俊尚『「当事者」の時代』(光文社新書、2012年)A ツイッターでの議論が「マウントの取り合い」と揶揄されるように、人は往々にして、議論のときはまず自分を優位において、安全圏から一方的に意見してやろうとするものである。本書…

ドミニク・ラピエール、ラリー・コリンズ『パリは燃えているか?(上・下)』A、エーネ・リール『樹脂』B

【最近読んだ本】 ドミニク・ラピエール、ラリー・コリンズ『パリは燃えているか?(上・下)』(志摩隆訳、ハヤカワ文庫、1977年、原著1965年)A ナチスによる4年に及ぶパリ占領からの解放を描いた、ノンフィクションの歴史的傑作である。ナチス、フランス…

藤野可織『おはなしして子ちゃん』A、司城志朗『存在の果てしなき幻』B

【最近読んだ本】 藤野可織『おはなしして子ちゃん』(講談社、2013年)A 奇想小説と呼ぶのにふさわしい短編集である。標本の猿がしゃべりだすとか、人魚のミイラ(の作り物)が意識をもっているとか、写真を撮ると必ず心霊写真になるとか、ややグロテスクな…

安原顯『畸人伝・怪人伝 シュルレアリスト群像』A、ソウルダッド・サンティヤゴ『婦警トーニの爛れた夏』A

【最近読んだ本】 安原顯『畸人伝・怪人伝 シュルレアリスト群像』(双葉社、2000年)A ガラ(ダリを天才に仕立てあげた女性)、アルトー、バタイユ、ルーセルの4人の伝記――というより、彼らについての安原が気に入った評伝を紹介した本。もとは『鳩よ!』で…

飯田譲治『NIGHT HEAD2041(上・下)』B、アンドレアス・グルーバー『黒のクイーン』B

【最近読んだ本】 飯田譲治『NIGHT HEAD2041(上・下)』(講談社タイガ、2021年)B 1992年~1993年に放映され、豊川悦司と武田真治の主演でカルト的な人気を博したドラマ『NIGHT HEAD』のリメイク作品。原作者自身によるノベライズで、先行して放映されてい…

『徳川夢声の問答有用1』A、ウルズラ・ポツナンスキ『古城ゲーム』B

【最近読んだ本】 『徳川夢声の問答有用1』(朝日文庫、1984年)A 話術の名手として知られた徳川夢声(1894~1971)は、1951年~1958年にかけて週刊朝日で「問答有用」という有名人との対談記事を連載しており、それは単行本全12巻として刊行されたが、その…

小野一光『風俗ライター、戦場へ行く』B、鷲田旌刀『放課後戦役』A

【最近読んだ本】 小野一光『風俗ライター、戦場へ行く』(講談社文庫、2010年、単行本2001年)B ある種、狂気の記録といえるのかもしれない。白夜書房のライターだった著者が、失恋のショックで1989年、23歳の夏に海外に行き、香港、タイを経て、なりゆきで…

柳沢玄一郎『軍医戦記 生と死のニューギニア戦』A、柴田錬三郎『異説幕末伝』B

【最近読んだ本】 柳沢玄一郎『軍医戦記 生と死のニューギニア戦』(光人社NF文庫、2003年、単行本1979年)A 軍医戦記――というから、野戦病院で働いた記録なのかと思ったら、工兵部隊として破竹の勢いのシンガポール攻略から一転して地獄のようなニューギニ…

三好徹『政商伝』A、童門冬二『冬の火花 上田秋成とその妻』B

【最近読んだ本】 三好徹『政商伝』(講談社文庫、1996年、単行本1993年)A あまり知られていないが、三好徹は歴史小説の名手である。史料を丹念に読みこみ、自身の見解も交えながら、小説としても面白く仕上げてみせる。なにより、比較的短いのが良い。やは…

三好徹『幕末水滸伝』B、林青梧『足利尊氏(上・下)』A

【最近読んだ本】 三好徹『幕末水滸伝』(光文社文庫、2001年、単行本1998年)B 史伝小説の多い三好徹の中では珍しく、架空の剣士・香月源四郎が主人公。幕末の江戸で剣の道を追究する彼を狂言回しに、福沢諭吉・小栗上野介・勝海舟・清河八郎・中村半次郎・…

塚本青史『仲達』B-、パトリシア・カーロン『行きどまり』B

【最近読んだ本】 塚本青史『仲達』(角川文庫、2012年、単行本2009年)B- 司馬懿仲達が主人公という珍しい小説。司馬懿ははたらきが大きい割に、前面に出てくるのがやや遅いのと、諸葛亮の人気のせいか、不遇な人である。本作は曹操の死の直後からはじまり…

神坂次郎『秘伝洩らすべし』B、ジェイムズ・デラーギー『55』B

【最近読んだ本】 神坂次郎『秘伝洩らすべし』(河出文庫、1986年)B 薄くて読みやすいが、クセの強い短編集である。 神坂の代表作である『元禄御畳奉行の日記』は、実在の日記を読み解くことではなやかな元禄時代の陰の部分をあばきだしてみせたが、本書で…

内海隆一郎『波多町』B、秋田禎信『愛と哀しみのエスパーマン』B

【最近読んだ本】 内海隆一郎『波多町(なみだまち)』(集英社文庫、1997年、単行本1992年)B 変な小説である。平凡な男がある町を訪れ、町の住人の策略で帰れなくなるという、カフカ的というか、個人的には眉村卓を彷彿とさせるはじまりで、好きなシチュエ…

神坂次郎『元禄御畳奉行の日記』A、スコット・ボーグ『消された私』B+

【最近読んだ本】 神坂次郎『元禄御畳奉行の日記』(中公新書、1984年)A これはおもしろい。日本史上でも有数の、町人文化の栄えた元禄の世……と、はなやかな江戸の姿を語りおこし、そういったイメージとは異なる「もうひとつの元禄」を、とある尾張藩士の遺…

ラーメンズのコントにおける知的障害者差別について

小林賢太郎は、過去のコントで不適切な言葉があったことを自ら認め、その後は「人を傷つけない笑い」を目指してきたと述べた。世間もそれを誠実な謝罪であると認める流れになっている。だが「人を傷つけない笑い」とは何なのか。 前から気になっているのは、…

北方謙三『不良の木』B、フレデリック・ポール『チェルノブイリ』B

【最近読んだ本】 北方謙三『不良の木』(光文社文庫、1994年、単行本1991年)B しがない私立探偵が、山奥で怪我した14歳の少年を偶然たすけたことから、少年とその親の確執をめぐるトラブルに巻きこまれる。淡々とした無駄のない文体、信条をつらぬくスタイ…

ジェイムズ・サリス『黒いスズメバチ』B、リチャード・プレストン『ホット・ゾーン』B

【最近読んだ本】 ジェイムズ・サリス『黒いスズメバチ』(鈴木恵訳、ミステリアス・プレス文庫、1999年、原著1996年)B ニューオーリンズを舞台に、黒人の私立探偵を主人公としたハードボイルドという異色作。時代は60年代末で、人種差別が公然とまかり通る…

桜木知沙子『真夜中の学生寮で』B、宮内勝典・高橋英利『日本社会がオウムを生んだ』B

【最近読んだ本】 桜木知沙子『真夜中の学生寮で』(キャラ文庫、2009年)B 前半は良い。寮の一人部屋が怖くて独りで眠れない少年の奮闘という、他人にはくだらないが本人には切実な問題を描いて、良質な青春小説になっている。 この少年が素直でけなげなキ…

佐々木禎子『くくり姫』B、パトリシア・カーロン『ささやく壁』B

【最近読んだ本】 佐々木禎子『くくり姫』(ハルキ・ホラー文庫、2001年)B 懐かしき世紀末小説、という印象である。幼いころから性的虐待を加えていた父を殺してしまった11歳の少女が、脳裏に響く菊理姫(くくりひめ)の予言に導かれたという謎の大学生の青…

黒澤いづみ『人間に向いてない』B、マーティン・ラッセル『迷宮へ行った男』B

【最近読んだ本】 黒澤いづみ『人間に向いてない』(講談社文庫、2020年、単行本2018年)B カフカの『変身』において謎なのは、虫に変貌したグレゴール・ザムザよりも、むしろ家族の反応のほうではないか――という話を読んだことがある。それに対して考えたの…