■
山岡荘八『吉田松陰』(講談社文庫全2巻)を読んだ。
全体に説教臭いというか、読者への教訓として時代小説を書いているのがわかりやすすぎる。山本有三の『路傍の石』でも読んでいるような気分であった。もっと若いときに読めば感銘を受けたのかもしれない。
多くの本で描かれるように、吉田松陰は生真面目な性格で、酒や女には一切手を出さず、人を信じて決して疑わない善良な人間でもあった。三好徹の『高杉晋作』の場合は能力はあるが融通の利かない堅物として描かれていたが、山岡荘八はどこまでも好意的に、高潔な人物として描く。
宮部鼎蔵ら周囲の人間も彼のお人よしぶりに呆れながら、最終的には感銘を受け、あまつさえいっそう攘夷運動に邁進するようになりさえするという流れは、激動の時代にあっては胡散臭い。果ては、松陰の死によって長州の若者が奮起して明治維新に繋がったとまで褒めてしまうのはいきすぎだろう。
三好の場合は読んでいて少々シニカルに過ぎるし、山岡は逆に誉め過ぎが鼻につく。どちらを受け入れるかは、まあ読んだときの気分次第だろうか。できれば続編の『高杉晋作』も読みたいが、こんな調子だったら嫌だ。
- 作者: 山岡荘八
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1987/07/01
- メディア: 文庫
- クリック: 23回
- この商品を含むブログ (8件) を見る
- 作者: 山岡荘八
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1987/07/01
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 19回
- この商品を含むブログ (6件) を見る