DEEP FOREST/幻影の構成

読書記録。週2冊更新。A:とても面白い B:面白い or ふつう C:つまらない D:読むのが有害

ボーダーランド文庫の『オデュッセウスの宇宙船』(ピーター・コロージモ)を読んだ。
表紙から、オデュッセウスの冒険は実は宇宙旅行だった!……という話かと思ったらそうではなく、オデュッセウスが出会った化け物たちは、太古の昔に地球に飛来した宇宙人だった、ということで、宇宙考古学の専門家たる著者はその痕跡を世界中の古代遺跡に見出していく。
とはいえ、各地で鳥が神格化されていて、それをモチーフにした石像が多数あるとか、土偶や熊(一部の地域で信仰の対象)が宇宙服を着た人間ぽいとかいった例を大量に挙げて宇宙人が存在した証拠といわれて、当時でさえどれほどの説得力があったのかは疑問である。
本書においてオデュッセウスは基本的にとっかかりに過ぎず、話はそこからどんどん飛躍して、各地の遺跡の類似性から思いつきレベルの発言が述べられていく。しかし、ゼウスの武器は核兵器だったんじゃないかとか、鳥を象ったらしき金属製のアクセサリを見た現役パイロットが「これは××という戦闘機の模型だろう」と言い出したとか、細かいエピソードや考察はなかなか面白い。クリフォード・シマックやL・スプレイグ・ディ・キャンプの名前なんかも挙げられてて、SF作家の違った一面も垣間見える。
……と思って読み終えたら解説は武田崇元で、これは興味深いがこれは勇み足だ、とかいちいち批判していた。素人には大体同じように見えてしまうのだが、専門家ともなると違うらしい。
あまりひとつの事象を偏執的に掘り下げたりはせず、とにかく情報過多な本だったので、古代遺跡ガイドとしては面白かった。図版も豊富。

オデュッセウスの宇宙船 (ボーダーランド文庫)

オデュッセウスの宇宙船 (ボーダーランド文庫)