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トマス・H・クックの『夏草の記憶』(文春文庫)を読んだ。道尾秀介絶賛とか、クックの作品中最も後味が悪いとか脅されて覚悟して読んだものの、読み終えてのショックはそれほどではなかった。むしろ、明らかにこれを参考にしている道尾の『向日葵の咲かない夏』(新潮文庫)の方がその完成度において遥かに勝っている。最初は『夏草』が人種問題を重要な要素としているせいかとも思ったが、よく考えるとそうではない。
- 作者: トマス・H.クック,Thomas H. Cook,芹澤恵
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1999/09
- メディア: 文庫
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- 作者: 道尾秀介
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/07/29
- メディア: 文庫
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あと『夏草の記憶』への疑問として(ネタバレ)、
これだとエディなりトッドなりから真相が判明していたんじゃないかと思うのだが、なぜ30年以上もバレないままだったのかがよくわからない。その点、この物語で一番謎なのはその後成功したらしいエディである。あとケリーが廃人同様になったにせよ生きていたのなら、彼女のその後の人生は彼らとどう関わっていたのかも説明は必要だったと思う。あたかもその後30年以上何もなかったというのは無理がある。物語の構成上書くことができなかったのはわかるけれど。