DEEP FOREST/幻影の構成

読書記録。週2冊更新。A:とても面白い B:面白い or ふつう C:つまらない D:読むのが有害

雨の降った土曜日、父方の祖父の七回忌に出席した。
お寺での焼香、墓参りのあと食事会で、祖父の句文集を読みつつ、みんなで思い出を語り合った。ぼく自身は祖父とほとんど話すことはなかったため、今回初めて知ることが多かった。出征のこと、農業一筋に生きたこと、決して怒ることのない穏やかな人柄のこと。
わかりやすい物語に回収されることで、挨拶をした程度の記憶しかなかった祖父は、生きた人間となって、歴史に組み込まれていく。しかし同時にそれは祖父がどうしようもなく他者になっていくということでもある。

辞した後、母方の祖母のお見舞いに行った。
95歳の祖母は幸いぼくのことを見てちゃんとわかってくれて、手を差し出したらしっかりと握ってくれた。
恐らく七年後にぼくが思い出し、歴史の一部となるのはそのことだろう。
たとえば祖父の七回忌において、寺のヤギが読経の最中もずっと鳴いていたこと、子どもたちがずっと大騒ぎしていたこと、みんながそれを無視する形で法事を進めていたこと、そういったことは歴史には組み込まれたりはしないのだ。
帰りにはクレーン車の事故現場の前を通った。献花台の上に花が積み上げられていた。