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冬木冬樹の『魔法少女☆仮免許』全3巻(MF文庫J、2010年-2011年)を読んだ。
強大な力を持つ――ただし使い魔としての――少年をめぐって、魔法少女候補生たちが争奪戦を繰り広げる。
主人公が使い魔に過ぎず、状況における主役になりえない、という設定が、無力感を生みだし、さらにはその反動として、主に言葉による逆転に至る、という仕掛けになっているが、いかんせん文章が淡白なので、その構造にあまりカタルシスはなかった。
どのキャラクターもどこか思いつめたところがあって、そのために陰惨なヤンデレ小説になりそうな部分がいくつもあるのだが、そうはならずにどの巻も健全な成長小説として回収される。その意味では肩透かしとも安心ともいえるが、ヤンデレ小説に分岐した未来を無意識のうちに想像してしまうので少々心臓に悪い。
ただ、成長小説として終わるとはいっても、それはその巻のみの一時的な解決の方便にすぎず、次の巻ではどのキャラもその解決の欺瞞性を突きつけられる、という構造になっていて、そのあたりはけっこうシビアである。
キャラクターが増えながら、それぞれの内面を掘り下げていって、この先どうなるのだろう、というところで、打ち切りっぽく完結が宣言されているのが残念ではある。メインヒロインの田辺川涙と主人公の、読んでからちょっと考えないとよくわからない漫才が嫌いではなかったので。
- 作者: 冬木冬樹,H2SO4
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2010/11/20
- メディア: 文庫
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