DEEP FOREST/幻影の構成

読書記録。週2冊更新。A:とても面白い B:面白い or ふつう C:つまらない D:読むのが有害

最近買った本

カール・R・ポパー『確定性の世界』(田島裕訳、信山文庫、1998年)
法学系の本が多い信山文庫の中でなぜかポパーが訳されている。どうせ中公の世界の名著に入ってるだろうと思ってたら、ポパー自体入ってなくて意外。


吉田孝『田谷の洞窟』(鎌倉新書、1977年)
全長1キロに及ぶ洞窟に、300体をこえる密教の仏像や仏画の彫刻がある人工の地底伽藍・瑜伽洞に関する研究書。「かくれた名刹シリーズ」とあるが、これと『三浦の三十三観音』の二冊しか出ていないようである。


浅野孝一『低山逍遥の真髄』(山と渓谷社、1994年)
山と渓谷社は登山関連の本を多数出していて、これもその一つであるが、登山の際のテクニックではなく、著者の敬愛する先達としての登山家の紹介が主になっているのが、恐らく他にない特色。小暮理太郎、武田久吉田部重治など、名前も良く知らないが有名らしい人びとの生涯や著書が、コンパクトにまとまっている。


森恭三『記者遍路』(朝日選書、1974年)
1907年生まれ、朝日新聞記者として、開戦前のヨーロッパ、戦時中の前線、その後の冷戦の世界を見てきた一ジャーナリストとしての回想録。ニューヨーク支局員としての視点から、日米開戦に伴う資産凍結や収容所への抑留、交換船での帰国など、貴重な経験が語られる。戦時下の日本に自分を適応させるため、『中国の赤い星』を交換船から捨てた、といったエピソードも見える。


野坂昭如『新宿海溝』(文藝春秋、1979年)
実名による私小説五木寛之田中小実昌種村季弘丸谷才一吉行淳之介金井美恵子後藤明生佐木隆三などなど、錚々たる顔ぶれ。巻末に「登場人物名」だけでなく「登場店名」の索引まであるあたり、文壇バーの時代の私小説である。


田中健介『闘魂の士 柴田徳次郎伝』(野木大義監修、野木事務所、2008年)
国士舘創立者・柴田徳次郎の評伝。大学で配られたものか? 頭山満明石元二郎緒方竹虎中野正剛などといった大物たちとわたりあった武勇伝が並ぶ。


現代思想 1975年10月号 特集・都市のグラマトロジー』(青土社
特集関連で黒井千次の写真+詩「ある町の記憶」を収録。多分単行本未収録? 他、アーデルベルト・ライフの「エルンスト・ブロッホとの対話」、澁澤龍彦「サド侯爵の手紙」第一回などが目を引く。意外なことにこの時ブロッホは存命(1885 - 1977)。


惣領隆『彼女のつばさ』1-3巻(講談社X文庫ホワイトハート、1993-1994年)
恐らく本邦唯一のスチュワーデスラノベ。10年ほど前に存在を知ってずっと探していたのだが、ようやく発見。表紙はいかにもこのテーマらしくわたせせいぞう。作家はこの3巻で姿を消し、ジャンルとしても後続がなかったのが惜しい。