DEEP FOREST/幻影の構成

読書記録。週2冊更新。A:とても面白い B:面白い or ふつう C:つまらない D:読むのが有害

最近買った本


立原正秋対談集『日本の美を求めて』(角川書店、1983年)
ブックオフでよく見るが読んだことはない立原正秋(1926 – 1980)の没後刊行された、唯一の対談集。武田泰淳藤枝静男角川源義多田道太郎、小川国夫、宮原昭夫黒井千次などなど顔ぶれは豪華。小川国夫との対談では自分の死を予言したというから何なのかと思ったら、

(一休が78歳で40歳くらいの女性と恋に落ちたという話をうけて)
小川 立原さん、78になったらどうですか(笑)
立原 おれは55で死ぬつもりでいるから。(笑)(p.113)

とある。その通りになったわけだが、対談はこの発言で終わるのでその真意は問われない。とはいえちょうど50歳のときの発言なので、自分の中で節目の年として意識していたのだろうか。


実吉達郎『世界空想動物記』(PHP研究所、1992年)
動物学関連のエッセイとともに著者が書いた、無数の妖怪や幻獣紹介本の一つ。『アルスラーン戦記』で話題の蛇王ザッハークが出ているのでなんとなく買ってみた。前に読んだ本は(タイトルは覚えていないものの)生物学寄りの解説が多かったと記憶しているが、これは文献の記述に基いた解説が多いようだ。


滝本誠『コーヒーブレイク、デイヴィッド・リンチをいかが』(洋泉社、2007年)
なぜこの年に出たのかはよくわからないが*1滝本誠のリンチ本。古本屋のお茶やコーヒーの本の棚にあって、そうでもなければもっと前に買われていたと思う。そこに置いた店員は「デイヴィッド・リンチ」の方は何だと思ったのか……


神木ミサ『天使由来』(文芸社、2012年)
魔術結社I∴O∴S*2にて実際に魔術の修行を積んだ著者による実録小説、らしい。アマゾンの評価は異様に高い。江口之隆推薦!とあるが、「恒星の如きに輝きを放っているオーラ」をもつ主宰者・江口豊というのはこの人がモデルだろうか……と思ったら、あとがきによるとこれは名前だけで、人物としてはI∴O∴S主宰者の秋端勉を意識しているとのこと。
「運命の人」に出会って、彼の導きで未知の世界を知って、という話はたくさんあって、そういうものはたいてい、実は詐欺というオチがつくのだが、この本はそうならずに終わるようである。ユートピア


『悲しい日記』(冒険社、1996年)
1996年池袋で餓死した、77歳の女性と寝たきりの44歳の息子。彼ら親子を保護しなかったという責任を問われた豊島区は、母が遺した日記を公開し、彼らが自分の意志で生活保護を拒否したということを示そうとし、議論を巻き起こした――というようなことが、ネット上の情報によればあったらしいのだが、そういった経緯はほとんど記されず、遺されたノートのみを恐らく最小限の編集のもとに書籍化している。ストイックな姿勢とも言えるが、もう少し解説が欲しいところ。


戸板康二『元禄小袖からミニ・スカートまで 日本のファッション300年史絵巻』(サンケイドラマブックス、1972年)
タイトル通り、日本ファッション史の解説書。裏表紙に「三越300周年記念」のようなことが書いてあるから何かと思ったら、資料面で三越の協力があったらしい。というより三越とサンケイの企画で作られたものか。池田弥三郎他、当時有名な評論家や研究者の推薦があったりと豪華な本。この本はカバーに三越のテープが貼ってあって、刊行当時は三越でも売られていたようである。

*1:インランド・エンパイア公開とか、ツイン・ピークスDVD発売とかあったらしい

*2:英国発祥の『ゴールデン・ドーン』という魔術結社の流派の西洋神秘学を学術的に学び、そして実践する研究機関である日本の魔術結社、とのこと