DEEP FOREST/幻影の構成

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猿の惑星 創世記』(ルパート・ワイアット監督、2011年)B
 『猿の惑星』のリブート映画として、サルがどのようにして人間に代わって地球を支配するに至ったかを一から描くということだったらしいが、結局は普通のパニックホラー映画になってしまった印象。
 元祖『猿の惑星』は、原作者ピエール・ブールが戦時中に日本の捕虜になった経験が反映されていると言われており*1、『続・猿の惑星』でいったん完結したあとの『新・猿の惑星』『猿の惑星 征服』『最後の猿の惑星』は、恐らく黒人の公民権運動が背景にある。いずれも自分たちにとって異質で格下だったものがやがて同格になり、遂には支配関係が逆転すらしてしまうという恐怖を描き出していた。
 対して本作は、実験動物のサルの一部が制御不能になって暴れ出したという程度にとどまっており、いずれ彼らが自分たち人間にとって代わるほどの存在になる――という風にはとても思えない。その原因として、発達するサルと対比される、退化して無気力に生きる人間が描かれなかったことが挙げられると思う。元祖『猿の惑星』が人類文明の崩壊に説得力を与えていたとすれば、実は知能を持ったサルたちよりも、ロボトミーでも受けたかのように退化した人類のショッキングな姿だったのではないかと気づかされる。そう考えるとリブート版が、人間の滅亡の原因を主に未知のウィルスとしているのは、あまり良い選択とは思えないのだが。
 しかし映像はすごかった。見ている間はてっきり本物のチンパンジーにやらせているのかと思ったものである。

*1:原作自体は、人間が地球の支配者になっているのは偶然の結果に過ぎないという文明批評的なもので、実際のところどうなのか疑問であるが