DEEP FOREST/幻影の構成

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『時をかける少女』の絵について

アニメ映画『時をかける少女』(細田守監督)において重要な役割を果たしているのが、
主人公・真琴の叔母・芳山和子が修復し、博物館に展示していた古画「白梅ニ椿菊図」である。

「記者ノート・“時をかける絵”見ましたか」(読売新聞2006年8月31日、前田恭二記者)によれば、
これは架空の作品であり、和子が名づけたもの、という設定になっている。
(名前のわからない絵については研究者が名づけることができる)


ちなみに展示されている博物館は東京国立博物館である。
わかる人にはわかるらしい。
「展示」を監修したのは、東京国立博物館主任研究員の松嶋雅人という人。
細田守美大時代の同級生で、長年交友を続けていたという。


劇中では他にも古画が展示されており、
アノニマス―逸名の名画―」という一連の作品展になっている。
悲惨な時代を背景に、名も知れぬ絵師たちが残した作品。
「白梅ニ椿菊図」の両脇に並ぶのは、
島に流された貴人を描く「隠岐配流図屏風」と、
はるばる経典を求めて旅をする「玄奘三蔵像」。
前者は細田の選択だという。
作品のテーマと合わせて興味深い。


時をかける少女』は、
「時間」というものを深く考えさせてくれる作品であるが、
その背景にはこういった細部へのこだわりがあるのだ、という話。
そこには例えば『ダ・ヴィンチ・コード』などとはまた違った美術のあり方がある。