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最近は古い映画を観ていた。
『メメント』クリストファー・ノーラン監督、2000年。
記憶が10分しか続かない男が妻の死の謎を追う。ガイ・ピアース主演。
事件を追っていくとその真相は主人公の内部にあった、というオチは、多分ノーラン監督お得意なのだろうが、『インセプション』のほうがより洗練されていた気がする。その意味では既に古い作品になってしまった感がある。
『39 刑法第三十九条』森田芳光監督、1999年。
心神喪失者の犯罪を無罪とする刑法第三十九条へ疑問を投げかけるという趣旨のサイコサスペンス。鈴木京香・堤真一主演。
しかし社会派的な面よりも、暗い画面とか、他人と目を合わせずボソボソ喋る登場人物とかの、不安感を煽る演出が素晴らしい。コミュニケーション障害の人間たちが精神分析について語り合うというのは一つのアイロニーであるが、物語は進行していくため、コミュ障の集まりなのにコミュニケーションは成立しているというユートピア空間が画面の中に現出している。ヒロインの名前が小川香深(おがわかふか)というのも良い。
真相は……堤真一から逆算するとなんとなく予想がつくような気がする。
『回路』黒沢清監督、2001年。
まだインターネットが珍しかった時代に、通信回線を介して広がっていく「呪い」を描く。主演は加藤晴彦・麻生久美子。
色々理屈は説明されるが根底にあるのは生きていることや死ぬことへの不安であり、実際とりこまれた人々が死とも生ともつかない状態になって消えていくのは象徴的である。ただその孤独が広がって短絡的に世界滅亡へと結びつくあたりが、世紀末的な物語のパターンを引きずっている印象だった。当時ならともかく、今ではその展開に説得力を感じさせるのは難しいだろう。
映画は黙示録的・終末論的雰囲気で暗示的な映像が多かったが、徳間文庫の小説版ではあくまで偶然的なアクシデントとして「呪い」が発生し、世界が滅亡していく。多分かなり好みがわかれるのではないか。あと意外なことにちょっと饒舌過ぎて読むのがつらかったが。
『機動戦士ガンダムF91』富野由悠季監督、1991年。
やたら密度の濃いストーリーだった。一息ついて時計をみたらまだxx分しか経ってなかった、というのが何度もあった。
量産機がただ撃たれて爆発するだけでなくちゃんと最後まで戦っていたり、主人公以外の少年たちも逃げ惑うだけでなく超人的でない範囲で抵抗を試みたりしていて、感動した。脇役に単に主人公の引き立て役以上の奥行きがあったと思う。
物語自体は長大なストーリーのごく一部という印象だったが、続編を作る予定だったのだろうか。
『逮捕しちゃうぞ THE MOVIE』西村純二監督、1999年。
劇場版お約束の都市型大規模テロ。
内容を全く知らないで観たら、テーマが「お帰りなさい」だったのでいまいち楽しめなかった。
でも舞台がけっこう近所だったので、ガイドブックかなにかで確認してみたい。
『TERRORS 闇夜』萩原鉄太郎監督、2001年。
オダギリジョー・眞鍋かをり主演。昔つくられたホラービデオシリーズの一つらしい。
新種の蝶の発見、その研究者の謎の死をきっかけに、主人公の祖父の死の真相が明らかになっていく。CGによる発光現象シーンを多用しているせいで画面は安っぽいが、30分でよくまとまってはいたと思う。
『バベル〜THE TOWER OF BABEL〜』高橋伸之監督、2002年。
柏原崇・りょう主演の深夜ドラマ。巨大医療機関「バベル」に運び込まれる患者のドラマ、そしてその治療を通じて明らかになっていく主人公たちの過去。
昔多く作られた『Xファイル』や『BLACK OUT』などの科学ミステリドラマの一つであるが、暗い建物から一歩も外に出ず、スタッフはあくまでドライに患者と接し、あまり内面には踏み込まず、結末も多くを語らない、などの演出により、基本的に何も考えずに観られるとともに、好きなエピソードについては色々と考えたくなる。個人的にはスプリンターの少女のエピソードが好き。
手術シーンがけっこうリアルで良かった。あと冒頭の科学解説ナレーションが田口トモロヲというのはズルい。