澤村伊智『予言の島』B、村崎友『風の歌、星の口笛』B

【最近読んだ本】

澤村伊智『予言の島』(角川ホラー文庫、2021年、単行本2019年)B

 終盤までは楽しんで読めた気がする。舞台は瀬戸内海にある小さな島である。20年前、ある有名な霊能力者が「恐ろしい惨劇が起こる」と予言して死んだというその島に、「運命の日」を前にして、面白半分の観光客、霊能力者の信奉者、霊能力者の孫といった人々が集まる。島の住人が怨霊を信じているらしい様子を見せるなど不審な気配のなか、一人が殺され、予言どおりの惨劇が始まる。

 舞台は横溝のようでもあり、視覚的な文章でまずキャラクターが勢ぞろいし、それとともに不穏な背景が紹介されていく手際は金田一少年TRICKのようでもあり、映像化したらこんな風か、などと想像して読むのもなかなか楽しいところがある。怨霊の「正体」は、途中で想像がついてしまうが、島の人々が現代においてなぜ怨霊なんかを信じているのかということを合理的に説明するもので面白いと思った。

 しかし終盤の終盤、大ネタが明らかになる。確かに色々と手がかりは散りばめつつ、全然気付かなかったが、かといって感心するわけでもない。別にすべての構図が明らかになったからといって爽快感はなく、むしろイヤミス的な後味の悪さが残るだけだし、毒親というテーマがでてきたせいで半端に社会派的なものになってしまった気もする。とても最初から読みなおしてみる気にはなれなかった。

 作者は民俗ホラー的なものをからかってみたかったというようなことが解説で紹介されており、「一番怖いのは人間」という感想に反発していた覚えもあるが、やはり土俗ホラーのアップデート版でしかないように思うし、人間が一番怖いという感想は変わらないものだったと思う。

 

村崎友『風の歌、星の口笛』(角川書店、2004年)B

 横溝正史ミステリ大賞受賞作。未来の世界のどこかで起こる事件のお話が三つ、並行して語られていく。ハードボイルド風の探偵がペットロボットの相次ぐ異常停止事件の謎を追う話、未来の遺跡の調査中に密室殺人の現場を発見した探検隊の話、そして事故から目覚めると恋人の存在がこの世界から消えていることに気付いた若き研究者の話――三つのお話が合流するときに現れるのは、地球の運命をも飲みこむような恋愛物語であったという、好みの分かれそうな話である。

 実際、選評をみても誰もが口をそろえて、欠点だらけのものであると留保したうえで授賞を決定したようなことを書いているし、並行しているように見えて実は全く違う時間の話だったという「真相」はそう珍しいものではなくなってしまっている。個人的にはあまり斬新さは感じられなかった。

 ただ、この作品はまた読み返したいと思った。かつて自分が好きだったSFの雰囲気がここにはあったし、徐々に明かされていく世界観にわくわくする気持ちもある。ひとつのマザーコンピューターに支配される世界なんてのは、いまどき気恥ずかしくてなかなか書けなくなってしまっているが、しかしそういうものでも面白い話は書けるのだということを見せてくれている。ジャンルの枠組みを壊すようなものではないかもしれないが、昔ながらのガジェットの組み合わせで楽しませてくれる作品であると思う。