DEEP FOREST/幻影の構成

読書記録。週2冊更新。A:とても面白い B:面白い or ふつう C:つまらない D:読むのが有害

佐藤純一NHK ロシア語入門」の例文にジェローム・K・ジェロームの「ボートの三人男」らしき一節があって、懐かしさにしばし和んだ。
主人公があるとき医学書を読んだらそこに載っているすべての病気にかかっていることがわかって、青くなって医者に行ったら出てきた処方箋には、「6時間おきにビフテキ1枚とビール一本、朝には毎日必ず散歩、11時には就寝。病気についての本は読まないこと」と書いてあって、まあ効果はあったようで主人公も満足する、というもの。
医者に対して、「まず僕が罹っていない病気から話します。あんまり沢山の病気にかかっているのでそっちの方が早いんです」という台詞が昔大好きだったなあ、そういえば。
でもイギリスの小説の一節をロシア語の勉強で読むことになるとは思わなかった。


しかしこの本の例文は他にもいくつかヘンなものがあって、

「こんにちは、ピョートル・イヴァノヴィチ、わたしの大事なともだち! きみはなんと変わってしまったのだ! きみの髪の毛はいまでは白髪だし、そして目つきもすっかり別人だ…」
「失礼ですが、わたしはピョートル・イヴァノヴィチではなくて、ニコライ・ニコラーエヴィチです」
「なんだって、きみは名まえまで変えてしまったのかい」

なんてのは、もはや不条理小説の域である。
まあ、内容も少しひねりがあったほうが面白いという考え方もあるが、訳すときに結構大変である。