DEEP FOREST/幻影の構成

読書記録。週2冊更新。A:とても面白い B:面白い or ふつう C:つまらない D:読むのが有害

三田誠広『堺屋太一の青春と70年万博』B、関容子『日本の鶯 堀口大學聞書き』A

【最近読んだ本】

三田誠広堺屋太一の青春と70年万博』(出版文化社、2009年)B

 ふつうの評伝である。三田誠広堺屋太一と特に親交があったわけではなく、これを書くために勉強を始めたレベル。編集者からの依頼で堺屋に長時間のインタビューをして、それをもとにまとめたのがこの本であるらしい。それならインタビューのほうが読みたかったかもしれない。

 堺屋太一といってもブックオフでよく本をみかける(最近はあまり見なくなったが)程度の認識だったため、もともと役人だったこととか、役人の立場で万博を立ち上げた張本人であるとか、万博開催直前に現場から外されてしまったとか、その辺は知らなかったので勉強にはなるが、なにしろ堺屋は2019年死去でまだまだ元気なので、悪い部分は避けて書かれている印象は否めない。とくに、万博の話で小松左京の名前がひとつも出てこないのは解せないところである。岡本太郎丹下健三太陽の塔の設置場所をめぐって取っ組み合いのケンカになったことは知らなかったが。

 「団塊の世代」や「水平分業」などの用語を産み出し社会の意識に大きな影響を与えた堺屋太一の、功罪のうち「罪」を焦点にした分析を読んでみたい。

 

関容子『日本の鶯 堀口大學聞書き』(講談社文庫、1984年、単行本1980年)A

 小説かと思っていたら本当のインタビュー、しかも最晩年の1979年87歳のときの貴重な記録である。大學はこの2年後に89歳で亡くなっている。

 大學本人が語るわけなので、本人よりもむしろ与謝野晶子佐藤春夫、あるいは父の堀口九萬一(1865 - 1945。外交官としてブラジル、メキシコ、オランダ、ベルギー、スウェーデンなどに赴任)らのことが詳しく知れる。

 堀口大學の生の記録としても貴重だが、関容子と大學の交流の記録としても面白い。最初はおとなしい聞き役だったのが、次第にうまく合いの手を入れるようになって、大學もそれをとても楽しんでいる風がとても良い。