今邑彩『そして誰もいなくなる』B、辻仁成『海峡の光』B

【最近読んだ本】

今邑彩『そして誰もいなくなる』(中公文庫、2010年、単行本1996年)B

 名門女子高で、演劇部の生徒たちが『そして誰もいなくなった』になぞらえるように次々に殺されていき、殺された生徒たちがそれぞれに犯していた「罪」が明らかになっていく。人の心のいやな面を暴きだしていくのがこの作者の本領と思うが、ちょっとキャラが多すぎて、どれも好感を抱くほどでもなく、二転三転する真相や若者たちの独善的な「正義」といった要素もそれほど楽しめなかった。作中に「青酸カリを注射して殺す」というシーンがあるが、実際はそれでは死なないということがあとがきで書かれていて、そこは面白い。

 

辻仁成『海峡の光』(新潮文庫、2000年、単行本1997年)B

 芥川賞受賞作だが、それほど面白いとは思えない。陰険なエゴイストの顔を優等生の仮面に隠した偽善者と、彼に一か月間激しいイジメに遭っていた男が、囚人と看守という立場で再会する、という設定は面白いものの、ものすごく意外な事件が起こるわけでもなく、どこかで見たようなお話の範囲内で終わってしまう。やや期待外れである。

 ただ、看守たる主人公が、彼は自分のことに気付いているのだろうかとやきもきしている一方で、立場が逆転した囚人たる彼は、その皮肉を気付いてもたいして気にしてもいなかったらしいというすれ違いが最後に示される。そこに、いじめられっ子は人生をイジメの記憶に支配されているのに、いじめっ子にとっては人生の些末な一エピソードにすぎないという非対称性がリアルに示されているように思った。