北野勇作『どーなつ』B+、岡嶋二人『クラインの壺』A
【最近読んだ本】
北野勇作『どーなつ』(ハヤカワ文庫、2005年、単行本2002年)B+
何者かによる日常への侵略を、侵略された者たちの意識から描いているので、何が起こっているのかわかるようなわからないような、そういう連作短編集。
最近はどうだか知らないが、北野勇作の初期の作品はどれも同じで、しかしそこが良い。初めて読むものでも、里帰りしたような安心感がある(いや、一度読んだことがあったか?)
岡嶋二人『クラインの壺』(新潮文庫、1993年、単行本1989年)A
井上夢人の『オルファクトグラム』を最近読んで、面白いけど読むべき時期を逸してしまったな、と思って、本作ももう前ほどは楽しめなくなったのかな、と読み返してみたら面白かった。最初の契約書類が貼り付けてあるところから、ぐいぐい引き込まれてそのまま読んでしまう。1989年に書かれたバーチャル・リアリティがまだ十分に読めるというのは驚くべきことで、誤算といえば情報量はテラバイトでもまだ足りないだろうというあたりか。
改めて読んでみると意外に短くて、井上夢人になってから書いていたら倍くらいの長さになっていたのではないかと思わなくもない。百瀬伸夫はどうなったのかとか、気になる要素も残しているし。読み返すと恋愛ものとしても深いなとか、バーチャルから現実への移行は説明がちょっと強引かなとか、発見があった。
いずれドラマ版も見てみたいものだ。