DEEP FOREST/幻影の構成

読書記録。週2冊更新。A:とても面白い B:面白い or ふつう C:つまらない D:読むのが有害

読書

萩原麻里『暗く、深い、夜の泉』B、同『月明のクロースター』B

【最近読んだ本】 萩原麻里『暗く、深い、夜の泉』(一迅社文庫、2008年)B 閉鎖的な全寮制の高校が舞台。そこに転入した一人の少女を主人公に、最初はなんとなく赤川次郎のような雰囲気の謎めいた学園ミステリとして始まるが、学校の怪談、謎の生徒会長、生…

池波正太郎『幕末新選組』B、山岡荘八『小説太平洋戦争1』C

【最近読んだ本】 池波正太郎『幕末新選組』(文春文庫、1979年、単行本1964年)B 永倉新八が主人公の新選組小説。なぜ永倉なのかについては、解説の駒井晧二は、根っからの江戸っ子である永倉の生きざまを池波が気に入ったからであろうと推測している。江戸…

遠藤周作『何でもない話』B、眉村卓『遙かに照らせ』B

【最近読んだ本】 遠藤周作『何でもない話』(講談社文庫、1985年)B 内容はタイトル通り――つまり、取るに足らない事件や事件未満の出来事をきっかけに、自らの人生をふと振り返ったり、見方を変えることになったような人々の物語集ということになるのだろう…

マイケル・バー=ゾウハー『ファントム謀略ルート』B、宵町めめ『龍宮町は海の底』B

【最近読んだ本】 マイケル・バー=ゾウハー『ファントム謀略ルート』(広瀬順弘訳、ハヤカワ文庫、1982年、原著1980年) B 1980年の国際情勢を背景に繰り広げられる大仕掛けなサスペンス小説で、二つの物語が並行して進行する。ひとつはアメリカ大統領候補と…

ウォーレン・マーフィ『地獄の天井』A、千葉貢『相逢の文学』C

【最近読んだ本】 ウォーレン・マーフィ『地獄の天井』(平井イサク訳、サンケイ文庫、1986年、原著1984年)A ベルリン、ワシントン、カリフォルニアを結んで繰り広げられる「現代史伝奇スリラー」。翻訳小説で伝奇とつくのは珍しい。 時は1984年、主人公は…

カール・A・ポージイ『嵐の演習空域』A、三好徹『風は故郷に向う』B

【最近読んだ本】 カール・A・ポージイ『嵐の演習空域』(山本光伸訳、ハヤカワ文庫、1991年、原著1984年)A 翻訳者の山本光伸が、訳者あとがきの4ページ中2.5ページを「訳者あとがき」を書くことへの愚痴に費やし、残りで「読んでみたら面白かった」とちょ…

【最近読んだ本】 W・R・ダンカン『女王のメッセンジャー』(工藤政司訳、ハヤカワ文庫、1984年、原著1982年)B 「女王のメッセンジャー」(queen's messenger)というのは、イギリスで機密書類の運搬を担った国際的なネットワークのことである。実在する組…

【最近読んだ本】 ジョエル・スワードロウ『コードZ』(河合裕訳、1981年、原書1979年)A 時は1975年、アメリカ大統領ジェラルド・フォードは、テロへの迅速な対応のため、大統領直属のテロ対策エージェントを設置する。コードZと呼ばれるそれは、ひとたび指…

【最近読んだ本】 三好徹『旅人たちの墓石』(徳間文庫、1982年、単行本1977年角川書店)B 舞台は1973年のチリ。「赤いアジェンデ」政権に対するピノチェト将軍のクーデターを背景にした国際サスペンス小説である。解説で、アジェンデ大統領はカストロから贈…

【最近読んだ本】篠田節子『神鳥 イビス』(集英社文庫、1996年、単行本1993年) B イビスってなんだっけ? と思ったらトキ(Ibis)のことだった。タイトル通り、当時は日本産は最後の2羽が残るばかりとなっていたトキがテーマとなっている。 明治35年に27歳…

【最近読んだ本】 大藪春彦『野獣死すべし』(新潮文庫、1972年、発表1958年)A 大藪春彦を初めて読んだのだが、動機なしでただひたすら殺戮が続くことに驚いた。 主人公の伊達邦彦は戦前の満州ハルピン生まれ。敗戦の引揚げ時に中学生、大藪春彦が1935年生…

【最近読んだ本】 早乙女貢『奇兵隊の叛乱』(集英社文庫、2015年、単行本1970年)A 吉田松陰が神格化された現代では貴重かもしれない、維新史の暗部を描く異色作品。なにしろ執念で『会津士魂』全13巻(1970〜1988)・『続会津士魂』全8巻(1989〜2001)を…

【最近読んだ本】 阿部夏丸『見えない敵』(講談社文庫、2010年、単行本1998年)A 『オグリの子』の作者。そういえば昔ドラマやってたけど見なかったなと思いつつ読んだ。 色々な読み解く視点をうまく盛りこんでいて、教科書のような小説だと思ったが、一方…

【最近読んだ本】 小島アジコ『アリス イン デッドリースクール』(麻草郁原作、電撃コミックスEX、2015年)A 麻草郁原作の戯曲を基にしたコミック。平和なのんびりした時間を過ごす女子高に、3話目のラストにて突然あらわれたゾンビ。漫才コンビをめざす優…

【最近読んだ本】 丸山健二『踊る銀河の夜』(文藝春秋、1985年)B 三編収録の短編集だが、どれも同じような印象。いずれも都会から置き去りにされた島に住む、ひとりの男の一人称で、明確なものではないが、みな何かしら鬱屈をかかえている。物語は時系列を…

【最近読んだ本】 宮本昌孝・田中光二『漂流の美剣 失われし者タリオン1』(ハヤカワ文庫、1987年) B 『剣豪将軍義輝』などで有名な宮本昌孝のデビュー長編。 北欧の中世と神話の混交した世界観をベースに、大陸制服をもくろむ帝国と、それに抵抗する小国家…

【最近読んだ本】 アーサー・C・クラーク『天の向こう側』(山高昭訳、ハヤカワ文庫、1984年) A クラークの1947年〜1957年の10年間にわたる短編を集めた作品集。 やはり「90億の神の御名」であろう。ショートショートといえる長さの短編であるが、ラマ僧と…

【最近読んだ本】 柄刀一『3000年の密室』(光文社文庫、2002年)B あるアマチュア考古学者が長野県の山奥の洞窟に発見した縄文人のミイラは、密室状態で殺されていた。サイモンと名付けられた彼は何者なのか? 学者たちの議論が続く中、当のアマチュア考古…

【最近読んだ本】森真沙子『真夜中の時間割 転校生2』(角川ホラー文庫)A 『転校生』の続編のようだが、転校生はエピローグで登場するだけで、ほぼ独立している。あまり期待せずに読んだのだが、マンネリを恐れてか、掌編を随所に挟んだりして変化に富む構…

【最近読んだ本】 森真沙子『転校生』(角川ホラー文庫、1993年) B 一編ごとに異なる高校を舞台とするホラー短篇集。転校生という外部の視点から、学校内の些細な違和感――古い言い伝えや行動のおかしな生徒など――が発見され、その正体をさぐる内に意外な真…

堀田善衛『めぐりあいし人びと』(集英社、1993年) S 堀田善衛といえば、モスラの原作者の一人であるとか、宮崎駿が代表作の『方丈記私記』のアニメ化を構想してたことがあるとかで、たまに名前が出る、戦後知識人の大物である。本書はその入門書として最適…