【最近読んだ本】 吉川英治『平の将門』(吉川英治歴史時代文庫、1989年、単行本1952年)B+ 吉川英治の描く将門は、英雄でもなんでもない。 イメージとしては、気の優しい力持ち、というところだろうか。頭は良くない。学もなく、弁も立たない。むしろ、一族…
【最近読んだ本】 今東光『蒼き蝦夷の血 第4巻 奥州藤原四代・秀衡の巻 下巻』(徳間文庫、1993年、単行本1978年)B 古本屋に最終巻の4巻だけあったので買ってきてみたが、中をのぞくとほとんど義経による平家滅亡の話だったので、問題なく読める。話は平家…
【最近読んだ本】 道尾秀介『光』(光文社文庫、2015年、単行本2012年)B 小学生男子のひと夏の冒険を描いた、道尾版『スタンド・バイ・ミー』である――ということに気づいたのは、エピローグでそれぞれのその後が語られてからだが。 面白いのだが、どうして…
【最近読んだ本】 東野圭吾『十字屋敷のピエロ』(講談社文庫、1992年、単行本1989年)B 十字型の奇妙な屋敷で起こる連続殺人事件を描くミステリ。本作ではもう一ネタ、意識を持つ奇妙なピエロ人形というものが出てきて、そのピエロから見た事件が語られる。…
【最近読んだ本】 澤村伊智『予言の島』(角川ホラー文庫、2021年、単行本2019年)B 終盤までは楽しんで読めた気がする。舞台は瀬戸内海にある小さな島である。20年前、ある有名な霊能力者が「恐ろしい惨劇が起こる」と予言して死んだというその島に、「運命…
【最近読んだ本】 二階堂黎人『聖アウスラ修道院の惨劇』(講談社文庫、1996年、単行本1993年)B+ 実は二階堂黎人を初めて読んだ気がするのだが、予想していたより面白かった。これは日本で宗教ミステリを試みた、稀有な例である。野尻湖畔にある日本とは思…
【最近読んだ本】 今邑彩『そして誰もいなくなる』(中公文庫、2010年、単行本1996年)B 名門女子高で、演劇部の生徒たちが『そして誰もいなくなった』になぞらえるように次々に殺されていき、殺された生徒たちがそれぞれに犯していた「罪」が明らかになって…
【最近読んだ本】 機本伸司『メシアの処方箋』(ハルキ文庫、2007年、単行本2004年)A SFというジャンルのひとつの極北と言えるかもしれない。 「技術的に可能だからやる」というSFのひとつの原則をつきつめた、読者をも置いてきぼりの思考実験小説である。 …
【最近読んだ本】 島田雅彦『カオスの娘 シャーマン探偵ナルコ』(集英社、2007年)B シャーマンとしての力を持ち現代に生きる少年が、凶悪な犯罪の犠牲んになって、自身もまた凶悪な犯罪者となった少女を助けるべく、巨大な悪と自身の運命に立ち向かうスピ…
【最近読んだ本】 周木律『眼球堂の殺人』(講談社文庫、2016年、単行本2013年)B 新本格の王道である館もの。面白かったのだが、放浪の数学者という主人公にあまり魅力がなく、館も見た印象がなんだかスカスカな感じで、圧倒的な存在感というものがなく、ち…
【最近読んだ本】 ブレイク・クラウチ『パインズ 美しい地獄』(東野さやか訳、ハヤカワ文庫、2014年)B+ ある男が路上で目覚めるところから始まる。彼は記憶を失った状態でふらふら歩きだすが、やがて自分がシークレットサービスの特別捜査官であること、失…
【最近読んだ本】 井上夢人『オルファクトグラム(上・下)』(講談社文庫、2005年、単行本2001年)A これは絶対に面白いと思って、万全のコンディションのときに読もうと思いつつ、機会を得ずに15年くらい積んだままになっていた本を、ようやく読んだ。 そ…
石持浅海『二歩前を歩く』(光文社、2014年)B 石持浅海らしい、安定したクオリティで読ませる短編集。 超常現象を扱ったミステリということでその辺の議論をするのかと思いきや、現象自体は認めて、それが起こるのにはどんな論理があるのか、ということを解…
【最近読んだ本】 野阿梓『五月ゲーム』(ハヤカワ文庫、1992年)B 銀河帝国打倒を目指す秘密結社・狂茶党(マッド・ティーパーティー)に属する若き美貌のテロリスト、レモン・トロツキーの闘いを描く冒険SF――なのだが、本作では目的地への移動中に別のテロ…
【最近読んだ本】 吉川英治『源頼朝』(全2巻、吉川英治歴史時代文庫、1990年、単行本1940~1941年)B 吉川英治が『新・平家物語』(1950~1957)に先だって書かれた、源頼朝を主人公とする作品。新平家に対しての影の薄さはどういうことかと思ったら、源義…
【最近読んだ本】 中島義道『非社交的社交性』(講談社現代新書、2013年)B まとまりのない本であると思ったら、主に全50回の新聞連載をまとめたものであるそうだ。内容は主に、著者が今まで出会ってきた非社交的な人の記録であり、また私塾の宣伝でもあり、…
【最近読んだ本】 清水義範『グローイング・ダウン』(講談社文庫、1989年、単行本1986年)A 清水義範の、比較的初期の短編集。同人活動を経て単行本デビューが1977年で、本書に収録の短編は1982年~1986年あたりに書かれている。1986年に『蕎麦ときしめん』…
【最近読んだ本】 若竹七海『依頼人は死んだ』(文春文庫、2003年、単行本2000年)B 若竹七海は20年くらい前に『火天風神』を読んだことがあって、若者ゆえの痛々しさが嵐に遭難して次々にあらわになっていく、その残酷さにショックを受けて、ずっと敬遠して…
【最近読んだ本】 田口ランディ『コンセント』(幻冬舎文庫、2001年、単行本2000年)B アパートの一室で腐乱死体となって発見された兄。妹の朝倉ユキは、理由のわからない彼の死に戸惑う。興味を引かれたのは、死体の傍にあった、コンセントをつながれたまま…
【最近読んだ本】 志茂田景樹『新黙示録 北海の秘祭』(徳間文庫、1988年、単行本1983年)B 実は志茂田景樹をちゃんと読むのは初めてである。昔たしかこの著者の『水滸伝』を読んで、「イケイケボーイの林冲」などという記述にくらくらしたのは憶えているが…
【最近読んだ本】 東野圭吾『おれは非情勤』(集英社文庫、2003年)B 就職に熱心でなく、非常勤講師として小学校を渡り歩いている「おれ」が、行く先々で遭遇した事件を解決していく連作ミステリ。 連載誌が「五年の科学」「六年の科学」という、東野ミステ…
【最近読んだ本】 樋口明雄『ハイスクール重機動作戦』(富士見ファンタジア文庫、1990年)A 先日、松岡圭祐の『高校事変』(2019年)を読んだのだが、この作品のパクリだったのではないかというくらいによく似ている。 まあ、「高校をある日突然謎のテロリ…
【最近読んだ本】 村上龍『五分後の世界』(幻冬舎文庫、1997年、単行本1994年)B コロナ禍で再評価の声もある『ヒュウガ・ウイルス』に先立つ第一作。こちらはこちらで、異世界転生ものの先駆けと言えなくもない。ジョギングをしていた男が、ある日突然、時…
【最近読んだ本】 桐野夏生『天使に見捨てられた夜』(講談社文庫、1997年、単行本1994年)B 女探偵・村野ミロシリーズの第2作。AV撮影のレイプシーンが実は本物のレイプなのでは?という真偽の調査を、フェミニズム団体から依頼されたミロは、AVの画像とい…
【最近読んだ本】 松岡圭祐『高校事変』(角川文庫、2019年)B 総理が訪問中の武蔵小杉高校を、突如として謎の武装集団が占拠する。情け容赦なく生徒や教師が殺され、かろうじて身を隠した首相も外部と連絡を絶たれ孤立する中、難を逃れたある少女がひそかに…
【最近読んだ本】 赤川次郎『群青色のカンバス』(光文社文庫、1989年)B 杉原爽香シリーズの第二弾。一作目から一年たち、16歳になった爽香が、高校のブラスバンド部の合宿先で事件に巻きこまれる。 登場人物が一年ずつ年を取っていくというコンセプトで、…
【最近読んだ本】 赤川次郎『若草色のポシェット』(光文社文庫、1988年)B 1年に1冊刊行し、登場人物がそれとともに年を取っていくというコンセプトで、今年めでたく48歳となった主人公・杉原爽香の、記念すべき15歳の第一作である。 15歳ながら、不登校ぎ…
【最近読んだ本】 あまのあめの『ピンクロイヤル』(全2巻、MeDuコミックス、2019~2020年)B 戦隊もので変身ヒロインものである。昔戦隊ものが好きだった女の子が、ある日突然、戦隊ヒロイン・ブキレンジャーのピンクアローとして戦うことになる。最近の魔…
【最近読んだ本】 桐野夏生『顔に降りかかる雨』(講談社文庫、1996年、単行本1993年)B 桐野夏生としての実質的なデビュー作。実は桐野夏生自体がちゃんと読むのは初めてなのだが、それをもったいなかったと思うくらいの面白さはあった。もともとベテランで…
【最近読んだ本】 とこみち『君が肉になっても』(ヤングジャンプコミックス、2020年)A 『見える子ちゃん』の二番煎じのようなものを予想して読んだら、独自の世界を構築していて面白かった。ジャンルの上では百合でホラーということになるのだろうか? 眠…