読書
石持浅海『二歩前を歩く』(光文社、2014年)B 石持浅海らしい、安定したクオリティで読ませる短編集。 超常現象を扱ったミステリということでその辺の議論をするのかと思いきや、現象自体は認めて、それが起こるのにはどんな論理があるのか、ということを解…
【最近読んだ本】 野阿梓『五月ゲーム』(ハヤカワ文庫、1992年)B 銀河帝国打倒を目指す秘密結社・狂茶党(マッド・ティーパーティー)に属する若き美貌のテロリスト、レモン・トロツキーの闘いを描く冒険SF――なのだが、本作では目的地への移動中に別のテロ…
【最近読んだ本】 吉川英治『源頼朝』(全2巻、吉川英治歴史時代文庫、1990年、単行本1940~1941年)B 吉川英治が『新・平家物語』(1950~1957)に先だって書かれた、源頼朝を主人公とする作品。新平家に対しての影の薄さはどういうことかと思ったら、源義…
【最近読んだ本】 中島義道『非社交的社交性』(講談社現代新書、2013年)B まとまりのない本であると思ったら、主に全50回の新聞連載をまとめたものであるそうだ。内容は主に、著者が今まで出会ってきた非社交的な人の記録であり、また私塾の宣伝でもあり、…
【最近読んだ本】 清水義範『グローイング・ダウン』(講談社文庫、1989年、単行本1986年)A 清水義範の、比較的初期の短編集。同人活動を経て単行本デビューが1977年で、本書に収録の短編は1982年~1986年あたりに書かれている。1986年に『蕎麦ときしめん』…
【最近読んだ本】 若竹七海『依頼人は死んだ』(文春文庫、2003年、単行本2000年)B 若竹七海は20年くらい前に『火天風神』を読んだことがあって、若者ゆえの痛々しさが嵐に遭難して次々にあらわになっていく、その残酷さにショックを受けて、ずっと敬遠して…
【最近読んだ本】 田口ランディ『コンセント』(幻冬舎文庫、2001年、単行本2000年)B アパートの一室で腐乱死体となって発見された兄。妹の朝倉ユキは、理由のわからない彼の死に戸惑う。興味を引かれたのは、死体の傍にあった、コンセントをつながれたまま…
【最近読んだ本】 志茂田景樹『新黙示録 北海の秘祭』(徳間文庫、1988年、単行本1983年)B 実は志茂田景樹をちゃんと読むのは初めてである。昔たしかこの著者の『水滸伝』を読んで、「イケイケボーイの林冲」などという記述にくらくらしたのは憶えているが…
【最近読んだ本】 東野圭吾『おれは非情勤』(集英社文庫、2003年)B 就職に熱心でなく、非常勤講師として小学校を渡り歩いている「おれ」が、行く先々で遭遇した事件を解決していく連作ミステリ。 連載誌が「五年の科学」「六年の科学」という、東野ミステ…
【最近読んだ本】 樋口明雄『ハイスクール重機動作戦』(富士見ファンタジア文庫、1990年)A 先日、松岡圭祐の『高校事変』(2019年)を読んだのだが、この作品のパクリだったのではないかというくらいによく似ている。 まあ、「高校をある日突然謎のテロリ…
【最近読んだ本】 村上龍『五分後の世界』(幻冬舎文庫、1997年、単行本1994年)B コロナ禍で再評価の声もある『ヒュウガ・ウイルス』に先立つ第一作。こちらはこちらで、異世界転生ものの先駆けと言えなくもない。ジョギングをしていた男が、ある日突然、時…
【最近読んだ本】 松岡圭祐『高校事変』(角川文庫、2019年)B 総理が訪問中の武蔵小杉高校を、突如として謎の武装集団が占拠する。情け容赦なく生徒や教師が殺され、かろうじて身を隠した首相も外部と連絡を絶たれ孤立する中、難を逃れたある少女がひそかに…
【最近読んだ本】 赤川次郎『群青色のカンバス』(光文社文庫、1989年)B 杉原爽香シリーズの第二弾。一作目から一年たち、16歳になった爽香が、高校のブラスバンド部の合宿先で事件に巻きこまれる。 登場人物が一年ずつ年を取っていくというコンセプトで、…
【最近読んだ本】 赤川次郎『若草色のポシェット』(光文社文庫、1988年)B 1年に1冊刊行し、登場人物がそれとともに年を取っていくというコンセプトで、今年めでたく48歳となった主人公・杉原爽香の、記念すべき15歳の第一作である。 15歳ながら、不登校ぎ…
【最近読んだ本】 あまのあめの『ピンクロイヤル』(全2巻、MeDuコミックス、2019~2020年)B 戦隊もので変身ヒロインものである。昔戦隊ものが好きだった女の子が、ある日突然、戦隊ヒロイン・ブキレンジャーのピンクアローとして戦うことになる。最近の魔…
【最近読んだ本】 桐野夏生『顔に降りかかる雨』(講談社文庫、1996年、単行本1993年)B 桐野夏生としての実質的なデビュー作。実は桐野夏生自体がちゃんと読むのは初めてなのだが、それをもったいなかったと思うくらいの面白さはあった。もともとベテランで…
【最近読んだ本】 とこみち『君が肉になっても』(ヤングジャンプコミックス、2020年)A 『見える子ちゃん』の二番煎じのようなものを予想して読んだら、独自の世界を構築していて面白かった。ジャンルの上では百合でホラーということになるのだろうか? 眠…
【最近読んだ本】 真梨幸子『縄紋』(幻冬舎、2020年)B イヤミスの名手として名高い作者による、400ページにおよぶ伝奇ホラーということなのだが、あまり楽しめなかった。伝奇小説というのは多分にロマンを楽しむものであり、一方で真梨幸子の本領であるイ…
【最近読んだ本】 矢部嵩『紗央里ちゃんの家』(角川ホラー文庫、 年)B 「僕」が毎年恒例で訪れる親戚の紗央里ちゃんの家は、小学5年の年はどこか違う。祖母がいつの間にか亡くなっていたと知らされ、紗央里ちゃんはおらず、出迎えた叔母は包丁をもって血ま…
【最近読んだ本】 近藤雅樹『霊感少女論』(河出書房新社、1997年)B 甲南大学・松山大学・甲子園短期大学などで民俗学や人類学を教えるなかで得られた心霊体験を分類・分析してまとめた本。 さまざまな心霊体験の事例集としては面白い。冒頭にエピグラフの…
【最近読んだ本】 佐々木俊尚『「当事者」の時代』(光文社新書、2012年)A ツイッターでの議論が「マウントの取り合い」と揶揄されるように、人は往々にして、議論のときはまず自分を優位において、安全圏から一方的に意見してやろうとするものである。本書…
【最近読んだ本】 ドミニク・ラピエール、ラリー・コリンズ『パリは燃えているか?(上・下)』(志摩隆訳、ハヤカワ文庫、1977年、原著1965年)A ナチスによる4年に及ぶパリ占領からの解放を描いた、ノンフィクションの歴史的傑作である。ナチス、フランス…
【最近読んだ本】 藤野可織『おはなしして子ちゃん』(講談社、2013年)A 奇想小説と呼ぶのにふさわしい短編集である。標本の猿がしゃべりだすとか、人魚のミイラ(の作り物)が意識をもっているとか、写真を撮ると必ず心霊写真になるとか、ややグロテスクな…
【最近読んだ本】 安原顯『畸人伝・怪人伝 シュルレアリスト群像』(双葉社、2000年)A ガラ(ダリを天才に仕立てあげた女性)、アルトー、バタイユ、ルーセルの4人の伝記――というより、彼らについての安原が気に入った評伝を紹介した本。もとは『鳩よ!』で…
【最近読んだ本】 飯田譲治『NIGHT HEAD2041(上・下)』(講談社タイガ、2021年)B 1992年~1993年に放映され、豊川悦司と武田真治の主演でカルト的な人気を博したドラマ『NIGHT HEAD』のリメイク作品。原作者自身によるノベライズで、先行して放映されてい…
【最近読んだ本】 『徳川夢声の問答有用1』(朝日文庫、1984年)A 話術の名手として知られた徳川夢声(1894~1971)は、1951年~1958年にかけて週刊朝日で「問答有用」という有名人との対談記事を連載しており、それは単行本全12巻として刊行されたが、その…
【最近読んだ本】 小野一光『風俗ライター、戦場へ行く』(講談社文庫、2010年、単行本2001年)B ある種、狂気の記録といえるのかもしれない。白夜書房のライターだった著者が、失恋のショックで1989年、23歳の夏に海外に行き、香港、タイを経て、なりゆきで…
【最近読んだ本】 柳沢玄一郎『軍医戦記 生と死のニューギニア戦』(光人社NF文庫、2003年、単行本1979年)A 軍医戦記――というから、野戦病院で働いた記録なのかと思ったら、工兵部隊として破竹の勢いのシンガポール攻略から一転して地獄のようなニューギニ…
【最近読んだ本】 三好徹『政商伝』(講談社文庫、1996年、単行本1993年)A あまり知られていないが、三好徹は歴史小説の名手である。史料を丹念に読みこみ、自身の見解も交えながら、小説としても面白く仕上げてみせる。なにより、比較的短いのが良い。やは…
【最近読んだ本】 三好徹『幕末水滸伝』(光文社文庫、2001年、単行本1998年)B 史伝小説の多い三好徹の中では珍しく、架空の剣士・香月源四郎が主人公。幕末の江戸で剣の道を追究する彼を狂言回しに、福沢諭吉・小栗上野介・勝海舟・清河八郎・中村半次郎・…